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特集 エンドサイトーシス
シナプス機能と膜再循環
著者: 門田朋子1
所属機関: 1千葉大学医学部解剖学第一講座
ページ範囲:P.287 - P.291
文献購入ページに移動 シナプス伝達については1950年代から「量子説」が唱えられ1),次いでこれに形態的に対応するものとして「小胞仮説」が提出された。これは量子分に相当する量の神経伝達物質がシナプス小胞(synaptic vesicles)に蓄えられており,これがシナプス小胞のシナプス前膜への開口(エクソサイトーシス)によってシナプス間隙へ放出される,とする仮説である。これに従って考えると,シナプス伝達に際して,シナプス小胞はミリ秒単位で動員されるため,使われる小胞の数は莫大なものになる。軸索流によって運ばれる膜輸送量を考えると使い捨てでは追いつかず,小胞膜の再利用を考えざるを得なくなる。以上のような背景のもとに「シナプス小胞膜再循環仮説」が1970年代初めにHeuserらにより提唱された。この総説では,(1)この古典的なシナプス小胞膜再循環仮説と,(2)われわれが哺乳類シナプスでみたシナプス小胞膜の動き,を簡単に説明し,(3)さらにシナプス小胞膜の再循環(membrane recycling)を調節する分子機構について現在どこまで明らかにされているかについて,その概要を紹介する。
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