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文献詳細

雑誌文献

生体の科学47巻4号

1996年08月発行

文献概要

連載講座 新しい観点からみた器官

脳室―特に睡眠に関連して

著者: 早石修1

所属機関: 1大阪バイオサイエンス研究所

ページ範囲:P.318 - P.323

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 脳室の詳しい科学的な研究は14世紀ルネッサンスの頃,人体解剖が法律で解禁になったときに始まったといわれている。中でも不世出の天才といわれたLeonard da Vinciは,額に近い方から脳室を第一,第二,第三に分け,各々の脳室が想像力と常識,理性,記憶の座であると主張した。この考え方はその後も2世紀近く継承され,有名なMagounの「The Waking Brain」1)にも16世紀の脳の解剖図が掲載されており,脳室こそが精神の座であるという当時の説が紹介されている(図1)。しかしながら17世紀になってイギリスのT. Willisの大著「Cerebri anatome」が発刊され,脳の実質こそがその機能にとって重要であるという,当時としては革命的な主張が発表された(文献2は1995年に発刊された英訳版である)。
 その後約200年の間に神経科学は急速な,また膨大な発展を遂げたが,脳室の生理的意義は殆ど忘れ去られ,脳が神経管から発生した折に生じた“腔”であり,脈絡叢から分泌された脳脊髄液(CSF)の通路となって,脳を物理的に保護している空間と位置付けられてきた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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