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文献詳細

雑誌文献

生体の科学47巻6号

1996年12月発行

文献概要

特集 老化

老化に伴うミトコンドリア呼吸機能障害に関係するのは核ゲノムかミトコンドリアゲノムか

著者: 林純一1

所属機関: 1筑波大学生物科学系

ページ範囲:P.565 - P.569

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 高齢化社会を迎えた現在,老化と糖尿病は重大な社会問題となりつつあるが,ごく最近ミトコンドリア脳筋症の原因であると考えられているミトコンドリアDNA(mtDNA)の突然変異と全く同じ突然変異が,驚くべきことにほとんどすべての老化したヒトの組織で発見されたばかりでなく1),かなり多くの糖尿病患者の組織のmtDNAにも存在することが相次いで報告され,mtDNAの突然変異と老化,糖尿病との因果関係も大きな注目を集めるようになった2-8)。しかも,これらの生命現象にはミトコンドリアの呼吸鎖の活性低下も伴うことから,mtDNAの突然変異はミトコンドリア脳筋症という特定の病気に限定されず,極めて身近なもので健常者の体の中にも少量ながら存在し,われわれの健康に重要な影響を与えている可能性が出てきたのである。
 確かにミトコンドリアは,酸化的リン酸化によるATP合成というエネルギー変換の場であり,ここに存在する独自のゲノム(mtDNA)が持つ遺伝情報のすべてはこのエネルギー変換に関係している。従ってmtDNAに突然変異が生じると,生体のエネルギー変換系は重大な影響を受ける可能性が出てくるのは当然である。しかし,逆にミトコンドリア呼吸鎖に問題が生じたからといって,必ずしもその原因がmtDNA側にあるとは限らない。これはミトコンドリア内でのエネルギー変換に必要な遺伝子が,mtDNAだけではなく核DNAにも存在するためである9)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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