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特集 老化
動脈硬化とスカベンジャー受容体
著者: 佐野裕之1 堀内正公1
所属機関: 1熊本大学医学部生化学第二講座
ページ範囲:P.582 - P.587
文献購入ページに移動スカベンジャー経路とは,生体内で陰性荷電に富む巨大分子(変性LDL,異物,老廃物など)を処理する機構として,1979年にBrownとGoldsteinによって提唱された1)。初期の動脈硬化性病変の特徴の一つは,血管内皮下にマクロファージ由来の泡沫細胞,すなわち細胞内にコレステロールエステル沈着を認めることである2)。このコレステロールはLDLに由来するが,LDL受容体を介するLDLの取り込み系は自己制御(down regulation)を受けること,また,LDL受容体を欠損する家族性高コレステロール血症の患者においても,初期病変部にマクロファージ由来の泡沫細胞を認める事実から,マクロファージの泡沫化にはLDL受容体とは異なる受容体経路が想定されるに至った3,4)。想定されたマクロファージスカベンジャー受容体(MSR注1)cDNAは,1990年にKodama5)らによってクローニングされ現実のものとなった。
本レセプターはアセチル化LDL(アセチルLDL),酸化LDLなどの変性LDLの細胞内取り込みならびに細胞内分解を担い,種々のポリアニオンに対しても結合部位を有するので,リガンド結合がポリアニオンによって効果的に阻害されることで知られている。
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