文献詳細
文献概要
特集 老化
ニューロトロフィンの脳における加齢変化と老化脳における動態
著者: 仙波りつ子1 加藤兼房2
所属機関: 1愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所周生期学部 2愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所生化学部
ページ範囲:P.594 - P.600
文献購入ページに移動脳の生後発達に伴い,顕著な変化をする脳特異タンパクは少なくない。しかしながら,脳の加齢(あるいは老化:aging)に伴って変動するタンパクとなると話は別である。そのなかでも,脳の老化に伴い新たに出現するタンパク(たとえばAlzheimer病にみられるアミロイドβタンパク,アポリポプロテインE4など)は,まだ比較的容易にとらえられるが1),加齢に依存した形態学的変化が顕著であっても,生化学的変動としてタンパクの増減をとらえることはなかなか難しいことが多い。アストログリア細胞のマーカーとされるS100βタンパクは加齢に伴い増加するタンパクのよい一例であるが,S100βについてはすでに総説があるのでそれを参照されたい2)。ところで,神経成長因子の欠乏がAlzheimer病の原因ではないかという報告3,4)がなされて以来,神経栄養因子は脳の老化に密接な関連をもつタンパクとして脚光を浴びてきている。本章では,神経成長因子ファミリー(ニューロトロフィン;NT)に絞って話を進めたい。
掲載誌情報