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文献詳細

雑誌文献

生体の科学48巻1号

1997年02月発行

文献概要

特集 21世紀の脳科学

脳神経系の発生と分化

著者: 畠中寛1

所属機関: 1大阪大学蛋白質研究所

ページ範囲:P.5 - P.11

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 脳神経系において主要な神経機能を担う細胞はニューロン(neuron)である。このニューロンという細胞は発生過程においてニューロブラスト(neuroblast)と呼ばれ,盛んに分裂し増殖することによって細胞数を整えてゆく。しかし,ある時期に分裂を停止し,ニューロンに分化する。ニューロンはこの後,標的組織の細胞(ニューロンの場合もあるし非ニューロン細胞の場合もある)を探して神経支配を行う。この過程がシナプス形成(synapse formation)期と呼ばれている時期である。神経系における最も重要な形態形成期である。
 これ以後,ニューロンは非分裂細胞として,一般には二度と分裂をしない。シナプス形成を経て形成された神経回路網は,その後個体の一生を通じて基本的には変わらず機能をし続ける。回路網の完成以後の成熟したニューロン間で,一部の神経回路網ではつなぎ換えが盛んに行われており,この現象はシナプス可塑性(synaptic plasticity)と呼ばれている。ニューロンの細胞分裂をしないという性質,神経回路網の安定性は,情報保持器官としての神経系の重要な性質である。それとともに,一部の回路網はシナプス可塑性によって回路が部分的につなぎ換えられているため,脳機能でも重要なものとされる記憶とか学習能力は担われ得るのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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