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文献詳細

雑誌文献

生体の科学48巻1号

1997年02月発行

文献概要

特集 21世紀の脳科学

ヒトの思考機能―前頭葉機能を中心として

著者: 長濱康弘1 柴崎浩2

所属機関: 1京都大学医学部脳病態生理学講座臨床神経学 2京都大学医学部臨床脳生理学

ページ範囲:P.31 - P.34

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 「我思う,ゆえに我あり」とデカルトが述べたように,物事を「考える」能力が備わっていることがヒトの最も重要な特徴のひとつである。ヒト以外の霊長類やその他の動物に思考機能があるか否かについては議論があるところと思うが,ヒトが他の動物と比べて最も複雑な思考機能を持っているであろうことには異論はないと思う。しかし,一口に「思考機能」といっても,その内容には,学習機能,推理,抽象化,企図能力などの実にさまざまな機能が含まれている。これらの「思考機能」の座としては,古くから前頭葉がその候補と考えられていた。これは前頭葉,特に前頭前野がサル以上の霊長類で著しく発達し,ヒトでは全大脳表面積の約30%を占めていることや,前頭前野の障害で行動の企画・組織化の障害をはじめ多様な認知行動障害が生じることなどが根拠となっている。前頭葉の重要性は古くから認められていたにもかかわらず,他の脳領野に関する知識の集積に比べて前頭葉機能についての確実なデータは少なく,“前頭葉の謎”といわれるほどであった。しかし,CT・MRIなどの画像診断の発達により前頭葉病変の局在と分布が正確に計測可能になり,さらにポジトロンCT(PET),ファンクショナルMRI(fMRI)など近年進歩の著しい画像的脳機能検査法の出現によって,ヒトの前頭葉機能についての知識が急速に深まっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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