文献詳細
特集 21世紀の脳科学
文献概要
近年の生理学,解剖学,生化学,細胞生物学,遺伝子工学,生物物理学などの多角的実験研究により,脳の構造と機能の解明が着実に進展しつつある1)。一方,これらの研究から得られた知見を基に,脳の働きを工学的に再構築してその動きを詳しく調べることにより脳の情報処理の仕組みに迫ろうとする,いわゆる「合成による解析」あるいは「構成的研究」も脳研究の重要な方法の一つである2)。脳の構造や機能が詳しく解き明かされつつある現在においては,それらの豊富な知見を取り込んだ,より高度なニューラルネットワークモデルの構築が可能となってきている。
脳は多数のニューロンが互いに結合した非線形ネットワークである。このネットワークは平衡状態に陥ることなく,常に変化を続ける非線形非平衡系である3)。さらに,脳は可塑性に基づいた適応的で自己組織的なネットワークでもある。このような複雑適応系としての脳における情報の表現や処理,記憶の仕組みを理解するためには,構成的研究が非常に有効であると思われる。すなわち,その本質を抽出した,できるだけ簡単なモデルを用いて脳を真似た大規模なネットワークを構築し,そのダイナミクスを観測し,それを数理的観点から解析するのである。以下では,この構成的研究の一例として,カオスニューラルネットワークを取り上げる。
脳は多数のニューロンが互いに結合した非線形ネットワークである。このネットワークは平衡状態に陥ることなく,常に変化を続ける非線形非平衡系である3)。さらに,脳は可塑性に基づいた適応的で自己組織的なネットワークでもある。このような複雑適応系としての脳における情報の表現や処理,記憶の仕組みを理解するためには,構成的研究が非常に有効であると思われる。すなわち,その本質を抽出した,できるだけ簡単なモデルを用いて脳を真似た大規模なネットワークを構築し,そのダイナミクスを観測し,それを数理的観点から解析するのである。以下では,この構成的研究の一例として,カオスニューラルネットワークを取り上げる。
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