文献詳細
連載講座 個体の生と死・1
文献概要
このシリーズの主題でもあるように個体は死を免れることができないが,種の生命は生殖細胞により連綿と引き継がれてゆく。配偶子とくに精子は,家畜で一般化しているように凍結保存後も機能を果たし得る。昨年の9月13日にマンモス再生計画が読売新聞の第一面を飾った。凍土に眠るシベリアのマンモスから精子を得てゾウに体外受精し,子孫を掛け合わせてマンモスを再生しようというのである。このジュラシックパークばりの計画が荒唐無稽と一笑に付されない背景として,体外受精技術の進歩があげられる。不完全な精子でも核さえ完全ならば卵細胞質内に直接注入することにより個体を発生させることが可能なのだ。この方法はintracytoplasmic sperm injection(ICSI,“イクシ”)と呼ばれている。精子形成の過程で極めて安定化した精子の核は,絶滅種さえ復活させられる可能性を秘めているわけである。最近では,減数分裂直後の精子細胞を成熟卵と電気的に融合させても正常個体を発生させ得ることがわかり1),男性側の不妊治療への応用が大いに期待されている。
一方,自然での受精成立過程は非常に複雑である。哺乳類では胚外卵黄嚢に発生した始原生殖細胞が生殖巣に移動し,減数分裂を経た精子細胞がそれぞれの種に特異的な形の精子へと分化する(図1a)。
一方,自然での受精成立過程は非常に複雑である。哺乳類では胚外卵黄嚢に発生した始原生殖細胞が生殖巣に移動し,減数分裂を経た精子細胞がそれぞれの種に特異的な形の精子へと分化する(図1a)。
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