特集 最近のMAPキナーゼ系
MAPキナーゼスーパーファミリーの活性化機構とその多様な機能
著者:
豊島文子1
森口徹生1
西田栄介1
所属機関:
1京都大学ウイルス研究所情報高分子化学分野
ページ範囲:P.92 - P.96
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細胞は周囲の細胞や外界から受けるさまざまな刺激に対して応答するシステムを持っている。刺激を細胞外から細胞内に伝えるために,細胞内にはさまざまなシグナル伝達機構が存在するが,その中でもMAPキナーゼによるシグナル伝達機構は中心的な存在である。MAPキナーゼは,さまざまな増殖因子で活性化されるセリン/スレオニンキナーゼとして同定された。MAPキナーゼの上流と下流に関するこれまでの研究から,細胞外から核内での転写調節に至る一連の細胞増殖シグナルの伝達機構が解明されてきた。MAPキナーゼは,細胞増殖以外にも,神経分化,卵成熟過程および初期発生の中胚葉誘導にも関与すると報告されている。MAPキナーゼの活性化にはキナーゼドメインⅦとⅧの間にあるTEY配列のTとYのリン酸化が必要であるが,この両アミノ酸をリン酸化し,MAPキナーゼを活性化する酵素が,セリン/スレオニン/チロシンキナーゼであるMAPKキナーゼ(MAPKK)である。MAPKKも活性化にはリン酸化が必要であるが,このリン酸化を担うMAPKK活性化因子をMAPKKキナーゼ(MAPKKK)と総称している。このMAPKKK-MAPKK-MAPKというキナーゼカスケードは,酵母から哺乳類に至るまでの種々の生物で保存されており,シグナル伝達においてMAPキナーゼカスケードが重要な役割を果たしていると考えられる。