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文献詳細

雑誌文献

生体の科学48巻2号

1997年04月発行

文献概要

特集 最近のMAPキナーゼ系

TPAによる分化誘導とチロシンホスファターゼ

著者: 清宮啓之1 鶴尾隆23

所属機関: 1財団法人癌研究会癌化学療法センター 2東京大学分子細胞生物学研究所 3財団法人癌研究会癌化学療法センター

ページ範囲:P.107 - P.111

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 1988年,リン酸化チロシン残基の脱リン酸化反応を触媒する酵素,チロシンホスファターゼ(PTPase)が精製され,そのアミノ酸配列が決定されたことから,同リン酸化はチロシンキナーゼとPTPaseの両者のバランスによって厳密に調節されていると考えられるようになった。この酵素(PTP-1B)との高い相同性から,従来より白血球共通抗原として知られていたCD45がPTPaseとして改めて同定されたのを皮切りに,これまでにさまざまなPTPaseアイソザイムの遺伝子が単離されてきた(図1)1,2)。概念的には,細胞を主に癌化へと導くチロシンキナーゼとは逆に,その逆反応を司るPTPaseはこれと拮抗的に癌抑制的な役割を果たしている可能性が考えられる。しかしながら,PTPase触媒ドメイン以外の領域はアイソザイムごとに多様性を示していることから,個々のPTPaseアイソザイムの機能は癌抑制といった一義的なものではなく,各々特異的な生理機能を果たしているものと考えられる。実際,最近までに細胞の増殖シグナルに対して促進的に作用するアイソザイムと,抑制的に作用するアイソザイムの存在が確認されてきた(代表例については,すぐれた総説3)があるので参照されたい)。
 細胞の増殖と分化は表裏一体をなすものであり,ある種の癌細胞は一定条件下で分化を誘導させることが可能である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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