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文献詳細

雑誌文献

生体の科学48巻2号

1997年04月発行

文献概要

特集 最近のMAPキナーゼ系

がん化とMAPキナーゼ系

著者: 岡崎賢二1

所属機関: 1生物分子工学研究所機能解析部門

ページ範囲:P.112 - P.117

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 がんの原因はがん細胞の増殖である。感染症をひきおこす細菌やウイルスが体外から侵入してくるのに対して,がん細胞は本来自分の体の細胞そのものであり,もともとは正常に働いていた細胞から生じたと考えられる。したがって,がんの真の原因は正常細胞をがん細胞に変えたものにあるといってよく,その根本的な解明には,正常細胞の増殖を調節しているしくみを理解することが必要である。
 多細胞生物を構成する細胞は,実に多彩な増殖刺激に反応して,静止状態から細胞周期を開始する。さまざまな増殖因子は刺激を伝えるために異なったシグナル伝達経路を利用するものの,その多くが共通して細胞内でMAPキナーゼ(哺乳類細胞ではextracellular signal-regulated kinase;ERK 1および2として知られる)の急激な活性化をひきおこす。このことから,ERKは増殖刺激を細胞核へと伝達する重要な経路の構成因子のひとつであろうと考えられてきた。この経路と細胞のがん化との関連は,まず活性型のRasあるいはRafによってがん化した細胞で,ERKの恒常的な活性化が見いだされることから示唆された1-3)。さらにこの観察を発端として,Ser/ThrキナーゼとしてのRafが,ERK活性化キナーゼであるMekを直接リン酸化・活性化するMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAPKKK)活性を持つことが明らかにされた4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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