特集 マトリックス生物学の最前線
XI型コラーゲンの構造と機能
著者:
木村友厚1
妻木範行2
越智隆弘2
所属機関:
1大阪労災病院整形外科
2大阪大学医学部整形外科
ページ範囲:P.254 - P.259
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1α,2α,3α鎖とそれぞれ名付けられた軟骨組織由来のコラーゲン鎖が,初めてSDS-PAGE上でBurgesonらによって示されたのは1979年である1)。以来,軟骨マトリックス中にはⅡ型コラーゲン以外にもⅨ型やⅩ型をはじめとするコラーゲン分子種の存在が次々と明らかにされてきた。さらに1α,2α,3αもその構造が次第に明確になり,やがて1:1:1のstoichiometryのヘテロトリマーを形成することが確実になるに及んで,α1(XI)α2(XI)α3(XI)の分子型をもつXI型コラーゲンと呼ばれるようになったのは周知のとおりである2,3)。これらXI型コラーゲン各鎖の中でα1(XI)とα2(XI)鎖は独自の遺伝子産物であるが4,5),α3(XI)鎖はⅡ型コラーゲンα1鎖遺伝子産物が異なる翻訳後修飾を受けたものである6)。現在,XI型コラーゲンは主に軟骨に存在して組織形成に役割を担っていることがわかっている。一方でα1(XI)鎖は非軟骨組織にも存在し,Ⅴ型コラーゲン鎖とコラーゲンヘリックスを形成していることも知られている。本稿ではこのXI型コラーゲンの構造について概説するとともに,その機能や疾患との関わりについても述べてみたい。