特集 マトリックス生物学の最前線
多様なラミニン分子の形成機構
著者:
新美友章1
熊谷知乃1
北川泰雄1
所属機関:
1名古屋大学生物分子応答研究センター
ページ範囲:P.260 - P.267
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基底膜の主要な糖タンパク質であるラミニンはα鎖,β鎖,γ鎖の3種類のサブユニットが会合したヘテロ三量体である。多様な異型体が発見されて一概にはいえなくなってきたが,典型的なラミニンは3本の短腕と1本の長腕からなる十字架状構造をしている(図1)。三つの鎖は長腕部に約70回のヘプタド配列を持っており,これに導かれて重複コイル構造を作って会合する1)。αとβ鎖,βとγ鎖およびγとα鎖は長腕のN末端で鎖間ジスルフィド結合し,βとγ鎖はC末端でもジスルフィド結合している。各鎖の短腕部分には,80余個のシステインがEGFに見られるパターンで繰り返して,鎖内ジスルフィド結合で棒状構造を作る部分と球状構造が交互に見られる。α鎖のC末端にはヘパリン結合などの多様な機能を持つ球状構造が5回繰り返し,全体として大きな球状構造を作っている。
マトリックス生物学の最前線を解説することを求められている本稿では,続々と発見されている多様なラミニン異型体を紹介し,これらのラミニン遺伝子のノックアウト実験を解説する。その後に,このような異型体が形成される機構を,われわれの最新データによって解説する。