特集 マトリックス生物学の最前線
ヘパラン硫酸プロテオグリカンの構造と機能
著者:
岡山實1
小栗佳代子2
所属機関:
1京都産業大学工学部生物工学科
2国立名古屋病院臨床研究部
ページ範囲:P.287 - P.294
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ヘパラン硫酸は血液凝固阻止活性を持つ生体物質であるヘパリンを肝臓,肺から精製する際に,副次的に得られる凝固阻止活性を示さないヘパリン様多糖として発見され,硫酸含量の低いことからheparin monosulfateと命名された。その後,アミロイドーシス患者の肝臓から単離されたヘパラン硫酸はheparitin sulfateと命名され,この名称は今日でも散見される。系統名はheparan sulfateである。Kraemerが種々の培養細胞によりヘパラン硫酸が合成されていることを報告1)して以来,多くの研究によって,生体内の殆どの細胞がヘパラン硫酸を合成していることが明らかにされ,それらはタンパク質に共有結合したプロテオグリカン(PG)として,各々の組織に特有な細胞外マトリックス(ECM)2)あるいは細胞膜3)に普遍的に存在していることが示されてきた。ほかの分子との相互作用を介したさまざまな生物活性が明らかにされつつある現在,ヘパラン硫酸の構造的多様性の解析とそれに基づく機能の解明は,最も注目される研究分野の一つとなっている。