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特集 言語の脳科学
言語の脳科学をめざして
著者: 大津由紀雄1
所属機関: 1慶應義塾大学言語文化研究所
ページ範囲:P.5 - P.9
文献購入ページに移動 脳の高次機能への関心の高まりの中で,わけても「言語の脳科学」が注目を集めている。周知のように,言語(後述する用語を用いれば「文法grammar」)は,その種固有性(species-specificity)および領域固有性(domain-specificity)により,以前から脳研究者の関心の対象であった。また,脳レベルにおける言語知識や言語処理に関心を寄せる言語理論研究者の数も少なくない。事実,Jakobson1)に代表される言語学的失語症学(linguistic aphasiology)の伝統は長く,その成果も多い。
しかし,まさに言語の種固有性のゆえに,倫理的な理由から,統制された実験が不可能であったため,近年までの言語の脳科学は失語症などの症例から得られた資料にその経験的基盤を置くものが多かった2)。この事態に変化をもたらしたのが,さまざまな脳機能イメージング技法の開発である。一方,生成文法(generative grammar)と呼ばれる言語理論の研究も著しい成果をあげ,生物学的理由による言語(文法)の普遍性と許容される個別性についての多くの興味深い知見が得られている3)。
しかし,まさに言語の種固有性のゆえに,倫理的な理由から,統制された実験が不可能であったため,近年までの言語の脳科学は失語症などの症例から得られた資料にその経験的基盤を置くものが多かった2)。この事態に変化をもたらしたのが,さまざまな脳機能イメージング技法の開発である。一方,生成文法(generative grammar)と呼ばれる言語理論の研究も著しい成果をあげ,生物学的理由による言語(文法)の普遍性と許容される個別性についての多くの興味深い知見が得られている3)。
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