icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学49巻1号

1998年02月発行

文献概要

特集 言語の脳科学

音楽の機能画像

著者: 中田力1

所属機関: 1新潟大学脳研究所脳機能解析学教室

ページ範囲:P.32 - P.39

文献購入ページに移動
Ⅰ.Introductory review:言語と音楽の神経科学
 1957年に出版されたNoam ChomskyのSyntactic Structures1)は現代言語学の出発点といわれる。Harvard大学の若き研修生であったChomskyは,それまで「刺激と反応」という図柄の上でのみ語られていた言語機能を,ヒトが生まれながらに持つ抽象概念機能に基づく創造過程のひとつであると位置づけた。幼児は言語を教えられるのではなく獲得する。高度な知能に支えられた思考機能の発達の過程で,与えられた環境の中から自己の思考を伝える媒体となる言葉を見つけ出し,内在する普遍的文法universal grammarに従って言語機能を獲得するとの理論である。サルは調音器官を持つが,この「言語獲得機能」を持たないとされる。
 ドイツの音楽学者Heinrich ShenkerはSyntactic Structuresの発表される20年以上も前に,全く同じ理論を音楽学musicologyに展開していたといわれる2)。Shenkerの理論がChomskyの理論の原点であったかどうかは別として,言語と音楽とが高度の類似性を持った高次機能であることには異論の余地がない。ChomskyのLanguage and Mind3)に啓蒙されたBersteinが,音楽そのものを自然言語として位置づける努力を重ねたこともよく知られている4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?