特集 血管―新しい観点から
内皮細胞接着因子PECAM-1と流れ感知・情報伝達
著者:
藤原敬己1
増田道隆1
大澤正輝1
所属機関:
1国立循環器病センター研究所循環器形態部
ページ範囲:P.99 - P.102
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血管および心臓の内面,すなわち血液が直に触れることのできる部分はすべて,単層の内皮細胞が形成する内皮と呼ばれる組織で覆われている。形態的にはきわめてシンプルな単層細胞組織だが,最近の研究から内皮は物質の選択的透過機能,諸生理活性物質の産生,情報伝達のインターフェース機能など,実に多様かつ重要な生体機能を持っていることがわかってきた。そうした機能の維持には,内皮組織が構造的完全性(integrity)を保つことが必要で,そのためには細胞間接着がうまく機能しなければならない。内皮細胞で発現されている細胞間接着分子には,ほかの上皮組織で見られるカドヘリン(cadherin)やオクルーディン(occludin)などに加え,PECAM-1(platelet endothelial cell adhesion molecule-1)がある。PECAM-1はほかの上皮組織では発現されておらず,内皮細胞が関係する細胞間接着に働いている分子である。ここでは内皮細胞におけるPECAM-1の働きについて考察する。