特集 血管―新しい観点から
血管内皮細胞の新しい活性物質
著者:
三井洋司1
鈴木徹2
所属機関:
1工業技術院生命工学工業技術研究所
2岐阜大学農学部生物資源利用学科
ページ範囲:P.103 - P.108
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血管内皮細胞は多彩な機能を持つことが最近注目されている。それには新しい発見が大きな貢献をしてきた。例えば,エンドセリンは内皮細胞が分泌するパラクラインホルモンの血管収縮因子として発見された。しかし,内皮細胞自身のNO放出に働くオートクライン作用のほか細胞増殖やアポトーシスへの関わりも重要である。神経細胞,平滑筋細胞,心筋細胞,線維芽細胞など多彩な細胞がエンドセリン(ET)を分泌することがわかってきて,その生物学的な役割の解明が新しく展開している。それに加えて,エンドセリンファミリー遺伝子のクローニングにより,ET-1のほかにET-2(マウスやラットではVIC)とET-3が発見された。さらに,それらの受容体群(ETRA ETRB ETRC)の解析を通じて,神経・心臓の初期発生やヒト遺伝子疾患への関わりなどが次々に解明されてきている。こうした展開は当然エンドセリンに限られたことではない。新しい生理活性物質の発見が産むインパクトの強さを示している。
われわれの研究グループは,この新しい生理活性物質の発見を目的とした戦略を展開している。例えば,1988年エンドセリンの分離,構造決定の際には,当時われわれがブタ大動脈由来の血管内皮細胞から樹立した不死化細胞株を用いて,その無血清培養液に分泌させた血管収縮因子を分離精製したことから,ブレークスルーが生じたのである。