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文献詳細

雑誌文献

生体の科学49巻2号

1998年04月発行

文献概要

特集 血管―新しい観点から

血管内皮・平滑筋細胞と弾性線維

著者: 大山俊郎1

所属機関: 1東邦大学医学部臨床生理機能学研究室

ページ範囲:P.109 - P.113

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 成人の弾性型動脈(大動脈,冠状動脈,頚動脈など)の壁は内腔表面の1層の内皮細胞,その直下の平滑筋細胞と線維成分からなる内膜肥厚,内弾性板,数―数十層の弾性板と平滑筋細胞からなる中膜,外弾性板,外膜からなる。心臓から発生する脈動に伴う血流がもつ内圧は,一定の圧波として壁に時系列でかかっている。壁のストレスは拡張圧と血管内径に比例し,血管壁厚に反比例する(Laplaceの法則)。壁の弾性(コンプライアンス)は主に弾性線維が構築する弾性板に由来する。弾性線維の弾性の源となる蛋白はエラスチンと呼ばれ,可溶性の67kDaの前駆体トロポエラスチンが酵素リシルオキシダーゼの助けを借りて架橋したものである。中膜では弾性線維と平滑筋細胞はいくつかのエラスチンレセプターまたはエラスチン結合蛋白を介して直接接して,壁全体の力学的連関性を維持している。エラスチンは動脈壁では平滑筋細胞より産生される。
 近年,エラスチン遺伝子の制御,細胞生物学的作用の面で研究が急速に進歩した。ここでは血圧とエラスチン代謝,エラスチン合成の制御機構,エラスチンの生物学的作用,レセプター,老化と弾性線維についての最近のトピックスを述べる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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