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特集 血管―新しい観点から
血管平滑筋分化に関与する遺伝子
著者: 森崎隆幸1
所属機関: 1国立循環器病センター研究所バイオサイエンス部
ページ範囲:P.114 - P.120
文献購入ページに移動 平滑筋の発生分化の分子機構はまだ不明な点が多い。筋肉のなかで心筋の研究は骨格筋に10年遅れ,平滑筋は心筋にさらに10年遅れているといわれるほどであり,ようやく研究が進んできている。骨格筋における1987年のMyoDの発見とそれに続くbHLHタンパク質ファミリーの解析,MADSスーパーファミリーに属するMEF 2因子の単離や解析は,「単一遺伝子(転写因子遺伝子)の発現により分化プログラムを開始しうる」という転写因子を中心とした細胞の発生分化の分子機構を明らかにし,他の細胞の分化モデルとしても重要な知見を与えている1,2)。また,心筋でも1993年にホメオボックス遺伝子に属する心筋特異的遺伝子Csx(Nkxファミリー)が単離された3)。しかし,心筋では単独で分化プログラムを開始しうる遺伝子は明らかではなく,Csx(Nkx)遺伝子ファミリー,MEF 2遺伝子ファミリー,GATA遺伝子ファミリー,bHLH遺伝子であるHand遺伝子群などの転写因子の分化における役割が明らかになりつつある4)。一方,平滑筋においては特異的遺伝子発現機構の解明がようやく始まったばかりである。本稿では平滑筋の発生分化に関わる分子機構についての最近の知見について述べるが,血管平滑筋の形質転換や増殖に関わる点については本書別項にて詳細が述べられているので,ここでは平滑筋の発生分化を中心に述べる。
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