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特集 幹細胞研究の新展開
多分化能の維持に働く分子機構
著者: 丹羽仁史1
所属機関: 1大阪大学医学部分子病態栄養制御(旧栄養)学教室
ページ範囲:P.221 - P.226
文献購入ページに移動 生体を構成する多種多様な細胞はただ一つの受精卵に由来する。この受精卵が有する分化能は,全能性(totipotency)と呼ばれ,成体内においても生殖細胞はこの能力を温存し,次世代の個体形成に備えている。このように,個体形成過程における全能性細胞の維持は,種の存続に必須の現象であるが,その機構は殆ど解明されていない。
胚幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)は,胚盤胞(blastocyst)内に存在する未分化細胞集団である内部細胞塊(inner cell mass)に由来する細胞株1)である。この細胞は体外で長期間培養後も,宿主胚盤胞の腔内に注入されるとキメラ個体の形成に寄与し,この中で生殖細胞を含むすべての細胞種に分化する2)。これより,ES細胞は全能性を有していることが保証されており,ES細胞が未分化状態を維持する機構は,生体内における生殖細胞系列の維持機構のモデルにもなりうると考えられる。以下,ES細胞の未分化状態維持機構に関するこれまでの知見を,われわれの検討結果も含めつつ概説する。
胚幹細胞(embryonic stem cells:ES細胞)は,胚盤胞(blastocyst)内に存在する未分化細胞集団である内部細胞塊(inner cell mass)に由来する細胞株1)である。この細胞は体外で長期間培養後も,宿主胚盤胞の腔内に注入されるとキメラ個体の形成に寄与し,この中で生殖細胞を含むすべての細胞種に分化する2)。これより,ES細胞は全能性を有していることが保証されており,ES細胞が未分化状態を維持する機構は,生体内における生殖細胞系列の維持機構のモデルにもなりうると考えられる。以下,ES細胞の未分化状態維持機構に関するこれまでの知見を,われわれの検討結果も含めつつ概説する。
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