20世紀はもう間もなく閉じようとしており,21世紀は目前にある。医学,生物学の21世紀は脳,神経の世紀となることに疑いはない。脳,神経機能の解明にどのようにアプローチするかは大きな問題であるが,そのひとつが薬物をツールとして脳,神経にせまることであろう。『生体の科学』誌は1991年の倍大特集号で「神経系に作用する薬物」をあつかった。その時私達編集委員は,10年後に同じ特集を完成した形で出すことを序文でお約束した。
今,1998年はその時から7年しかたっていない。10年を経ずして,この領域は完成したのだろうか。残念ながら完成したとはいえない。しかし,この間に神経領域での薬物作用機序の解明は非常に進んだ。21世紀に向けてこの進歩をまとめて示すことを脳,神経領域の研究者は強く求めている。私達はあえて未完成でもこの特集を出して,その要請に応えようと考えた。
雑誌目次
生体の科学49巻5号
1998年10月発行
雑誌目次
特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
序にかえて フリーアクセス
ページ範囲:P.320 - P.320
Ⅰ.受容体に作用する薬物 1.イオノトロピック受容体 1)陽イオンチャネル内蔵型
AMPA受容体・カイニン酸受容体
著者: 坪川宏
ページ範囲:P.322 - P.325
AMPA受容体・カイニン酸受容体はイオンチャネル内蔵型グルタミン酸受容体のサブタイプで,もう一つのサブタイプであるNMDA型に対してnon-NMDA型と総称されることがある。アゴニストとの結合によりチャネルが開き,陽イオンが透過する。グルタミン酸によるシナプス伝達時には,通常これらの受容体チャネル電流に起因する興奮性シナプス後電位(EPSP)がみられる。遺伝子クローニングにより両受容体を構成するサブユニットのcDNAが単離され,AMPA受容体のサブユニットとしてGluR1-4が,カイニン酸受容体のサブユニットとしてGluR5-7,KA1,KA2が報告された。受容体はこれらのサブユニットのヘテロマーとして機能し,組み合わせによってチャネルを透過できるイオンの種類が異なる場合がある。すなわちGluR2を持つAMPA受容体にはカルシウム透過性がないが,GluR1,3,4のみで構成された受容体はカルシウムを透過させる。
古くはAMPA受容体・カイニン酸受容体をそれぞれ選択的に刺激・抑制できる薬物がなかったため,哺乳動物の中枢神経系においては両者の異同が問題にされてきた。現在では,グルタミン酸以外の物質に対する結合能などを指標に比較的受容体特異的なアゴニスト・アンタゴニストが合成されている。
ATP受容体
著者: 井上和秀
ページ範囲:P.326 - P.328
陽イオンチャネル内蔵型ATP受容体はアミノ酸400~500個で構成されるポリペプチドで,分子内に膜貫通ドメインが二つあり,N末,C末を細胞内に位置しているとされている。これらがいくつか会合してイオンチャネルを形成し,神経伝達物質として放出されたATPにより刺激を受けて,そのチャネルを開き,非選択的にカチオンを通す。現在P2X1からP2X7まで7種類のサブタイプが知られているが1-3)(表1),それぞれに対する特異的なアゴニストとアンタゴニストは,P2X7に対するもの以外,ほとんど見つかっていない。これが主たる原因で,ATP受容体の機能に関する研究はいまだに遅れている。受容体サブタイプの判別には,次善の策として,実験対象のサブタイプに対するいくつかのアゴニストの作用強度を比較し,強度順序により決定するという方法を用いる。ただし,ATPはじめ多くのアゴニストは細胞膜外の代謝酵素により急速に失活するが,用いる実験標本によりその代謝活性が異なるために,同じ受容体サブタイプが発現しているにもかかわらず,異なった強度順位を与えてしまうこともある。また,用いるアゴニストにはかなりの活性不純物が混入し,高濃度で検討する場合には不純物の効果をポジティブフォールスとして判定する可能性があるので注意を要する。
NMDA受容体
著者: 倉本展行 , 荻田喜代一 , 米田幸雄
ページ範囲:P.329 - P.332
哺乳動物中枢神経系において,興奮性神経伝達に携わるグルタミン酸受容体には,イオノトロピック型とメタボトロピック型が存在する。N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体はその活性化に伴い,主にCa2+細胞内流入が励起されるイオノトロピック型受容体サブタイプの一つである。NMDA受容体はほかのサブタイプと同様に,記憶形成や学習獲得に関与するばかりでなく,脳虚血後の遅発性神経細胞死やてんかん,アルツハイマー病,ハンチントン舞踏病あるいはパーキンソン病など,種々神経細胞変性疾患の発症メカニズムに深い関連性を持つ。NMDA受容体はNMDA認識ドメイン,グリシン(Gly)認識ドメイン(GlyB部位),ポリアミン認識ドメイン,およびイオンチャネルドメインなど,少なくとも4種類のドメインから構成される蛋白質複合体として機能すると理解される1)。なかでも,NMDA認識ドメインおよびGlyBドメインはともにチャネル開口に必須である。さらに,NMDAチャネルにはMg2+部位,Zn2+部位,H+部位および非競合的アンタゴニスト結合部位(PCP部位)などの活性抑制部位が存在するので,NMDAチャネル開口は極めて精巧な制御メカニズムの統制下にあるといえる。
一方,近年の分子生物学的研究方法の発展に伴い,ラットおよびマウス脳からそれぞれNMDA受容体遺伝子が単離同定されている。
アデノシン受容体
著者: 黒田洋一郎
ページ範囲:P.333 - P.337
ATPとその分解物であるアデノシン化合物が,“進化的に最も原始的なオリジナル神経伝達物質,神経ホルモンである”というpurinergicsynapse説はG. Burnstockにより1972年に提唱されていたが,最近これらプリン化合物とその受容体の生体調節における重要性が,さまざまな面で明らかになりつつある。ことに脳神経系では,後で詳しく述べるように,記憶・学習や睡眠などわれわれの生活に密接に関係した脳機能を直接,間接にコントロールしていることが判明し,各種治療薬への応用の試みも多くなった。それに伴い,受容体の同定,分類など分子・細胞レベルの研究も近年急速に進みはじめ,これから益々盛んになる分野といえる。
ATPはあらゆる細胞の主要構成成分,エネルギー源であるばかりでなく,多くの中枢や末梢の神経終末のシナプス小胞中に高濃度で存在し,アセチルコリンやグルタミン酸など,他の神経伝達物質と共にシナプス間隙に放出される。こうして刺激(インパルス)頻度に比例して放出されたATPは,各種ATP受容体(別項参照)に作用したり,エクトプロテインキナーゼのリン酸ドナーになりシナプス膜蛋白質の細胞外ドメインリン酸化を起こし,シナプス伝達やシナプス形成に直接・間接に働いている。
グルタミン酸受容体
著者: 渡辺繁紀
ページ範囲:P.338 - P.341
[サブタイプ]
グルタミン酸受容体は代謝調節型受容体とイオンチャネル型受容体とに二分される。
代謝調節型受容体は7回膜貫通受容体で,薬理学的特性,アミノ酸配列の相同性,共役するG蛋白の相違に基づき3群に大別される。すなわち,Group Ⅰ(mglu 1,mglu 5),Group Ⅱ(mglu 2,mglu 3)およびGroup Ⅲ(mglu 4,mglu 6-8)がある(表1)。
セロトニン受容体
著者: 吉岡充弘
ページ範囲:P.342 - P.342
15種類以上のセロトニン受容体の存在が示されているなかで,イオンチャネル内蔵型の受容体は5-HT3受容体のみである。マウスでは5-HT3受容体を構成するひとつのサブユニットをコードするcDNAが同定され,483個のアミノ酸と487個のアミノ酸から成る二つのスプライシングバリアントが存在することが知られている。ヒトでは478個のアミノ酸から成る4回膜を貫通するタイプである。5-HT3,受容体はこの単一のサブユニットのみで機能的なイオンチャネルを構成している可能性が示唆されているが,確定はしていない。アゴニストおよびアンタゴニストは表1に示す。
アゴニストとして表1に示す三つの化合物が選択的であることが知られている。なかでもm-クロロフェニルビグアニドがもっとも効力が高く,効力の順はm-クロロフェニルビグアニド(>5-HT)>2-methyl-5-HT≧フェニルビグアニドである1)。しかしこれらすべて,部分アゴニストとしての性質を有しているため,使用にあたっては注意を要する。またフェニルビグアニドはモルモットの5-HT3受容体には無効である2)。5-HTのアナログである5-メトキシトリプタミン(5-MeOT)は,5-HT3受容体に対する効果を持たないかわりに他の5-HT受容体に対して5-HTと同程度の効果を有している。このことから,5-MeOTは5-HT3受容体関与を否定する際に用いられる。
ニコチン受容体
著者: 村松郁延 , 朱軍 , 谷口隆信
ページ範囲:P.343 - P.345
ニコチン受容体は分子量300K以上の糖蛋白で,五つのサブユニットから構成されている。サブユニットとしては,αサブユニットに9種類(α1~α9),βサブユニットに4種類(β1~β4)の亜型が,それにγ,δ,εサブユニットが各1種類存在する。従って,組み合わせの違いにより多種類のニコチン受容体が生体に分布していることになる。シビレエイの電気器官や神経節接合部の骨格筋型ニコチン受容体は,2個のα1サブユニットと1個ずつのβ1,γ(ε),δサブユニットで構成されている。これに対し,神経型ニコチン受容体には,α2~α6,β2~β4サブユニットが2:3の割合で集合したもの(2α3β型)と,α7,α8またはα9サブユニットが5個集合した5α型のものがある。いずれのニコチン受容体も五量体である1,2)。
ニコチン受容体はチャネル機能を内蔵している3)。アセチルコリンなどのアゴニストが結合すると五つのサブユニットの中央に形成されたポアporeが開き,陽イオンに対する透過性が高まる。骨格筋型が主にNa,Kイオンを通すのに対し,神経型はNa,KイオンだけでなくCaイオンに対しても高い透過性を示す。アセチルコリン結合部位は受容体に2ヵ所あり,互いに影響し合っている。これがニコチン受容体での薬物の作用を複雑にしている原因の一つである。表1に代表的アゴニスト,アンタゴニストを示す。
2)陰イオンチャネル内蔵型
GABAA受容体
著者: 赤池紀扶
ページ範囲:P.346 - P.348
γ-アミノ酪酸(GABA)は哺乳動物中枢神経系における代表的抑制性神経伝達物質である。受容体としてGABAA-Cが知られている。GABAA受容体は4個のサブユニットからなる五量体で,これを構成する4種類のサブユニットはα1-6,β1-4,γ1-3とδからなる膜4回貫通型である。N末端から数えて3番(M3)と4番(M4)目の膜貫通部位間の大きい細胞内ループ内にリン酸化部位があり,5個のサブユニットのM2領域両端の塩基性アミノ酸がC1-チャネル内壁を構成する。いわゆる受容体-C1-チャネル複合体である。GABAA受容体は主にシナプス下膜に存在し抗不安薬,全身麻酔薬,痙攣誘発薬や抗痙攣薬などの作用点でもあり,精神神経機能の調節に関与する。
GABAA受容体の活性化で賦活されるC1-チャネルは生理的条件下でC1-を選択的に,またC1-含む他陰イオンをSCN->Ⅰ->NO3->C1O3->C1->HCOO->BrO3->F->CH3COO->CH3CH2COO-の順に透過させる。加えて,細胞外のBr-はGABAA受容体のGABAに対する親和性を増大するし,すべての他陰イオンは細胞外よりGABAA応答の脱感作を促進する1)。
グリシン受容体
著者: 赤木宏行
ページ範囲:P.349 - P.350
グリシン作動性シナプス伝達は,GABA作動性シナプスとともに中枢神経系の抑制機構に深くかかわっている。GABAシナプスが中枢神経系に広く分布するのに対し,グリシンシナプスは脊髄,脳幹に局在分布するのが特徴である。このシナプス伝達が遮断されると,脊髄脳幹における脱抑制が起こり,その結果,反射性の運動機能の亢進,四肢の痙攣,呼吸麻痺などの諸症状が生じる。ストリキニーネによる薬物中毒や家族性疾患のひとつであるstartle diseaseがその一例である1)。
グリシン受容体(GlyR)はそれ自体が陰イオン(無機および低分子の有機イオン)を選択的に通過させるイオンチャネルを形成する複合体であり,その全体構造はGABA受容体(GABAR)と酷似しているが,個々のサブユニットはGABA受容体のそれらとは異なる分子であることが明らかにされている。GABARに作用点を持つと考えられている医薬品(ベンゾジアゼピン系抗不安薬,バルビタール酸系睡眠薬など)の多くは,GlyRに対しては影響を及ぼさないが,中にはGABARおよびGlyRの両方に作用するものもある(後述)2,3)。
2.Gタンパク共役型 1)アミン・アミノ酸受容体
ATP受容体
著者: 井上和秀
ページ範囲:P.351 - P.353
ATP受容体の分類については本誌48巻5号で紹介した1)が,その後大きな変化があった。一つには,それまでG蛋白共役型ATP受容体グループに加えられていたP2Y5およびP2Y7がグループからはずされた。前者は放射性リガンドを結合するも細胞内で本グループ特有の情報伝達を行わず,後者は実はロイコトリエンB4受容体であることが明らかになった2)からである。
もう一つは,サブタイプ同定の技術的問題である。ATP受容体サブタイプには特異的アゴニスト,アンタゴニストがいまだに存在せず,そのためにサブタイプ同定の手段に数種の非特異的アゴニストの強度順序を用いている。作用強度比(一般にはED50値を用いる)が10~1,000倍あるようなことはざらであり,従って使用濃度差が10~1,000倍となる。こうなると,アゴニストの純度が問題となる。例えば,P2Y6に対するアゴニスト強度比は上記分類表作成時ではUTP>ADP=2-methylthio ATP(2-MeSATP)>ATPとなっていたが,HPLCで精製した直後のアゴニストを使った場合,強度順位はUDP≫UTP>2-MeSATP=ADPとなり,ATPは活性なしとされた3,4)。どうやらこれまで認められていたATPの作用は,試薬「ATP」に不純物として含まれていたADPの作用であったらしい。
GABAB受容体
著者: 貝原宗重 , 谷山紘太郎
ページ範囲:P.354 - P.357
GABA(γ-aminobutyric acid)B受容体は1980年Boweryらにより,末梢および中枢神経組織において,GABAA受容体を活性化しないβ-chlorophenyl GABA(baclofen)により活性化され,GABAA受容体拮抗作用のあるbicucullineでは抑制されない,カテコールアミンの遊離を抑える受容体として報告された1,2)。その後,この受容体は百日咳毒素感受性GTP結合蛋白(G蛋白質)と共役する7回膜貫通型受容体であることが明らかとなった。これまでに報告されているGABAB受容体/百日咳毒素感受性G蛋白質を介する細胞内情報伝達経路を図1に示す。
GABAB受容体を介する情報伝達系として細胞内cAMP濃度の調節,Ca2+チャネル抑制そしてK+チャネル活性化が報告されている。細胞内cAMP濃度の調節については,1983年ラットの中枢シナプスの膜標品で,baclofenがアデニル酸シクラーゼの活性を抑制することが報告された3)。その後,種々の組織でGABAB受容体活性化によりアデニル酸シクラーゼ活性が抑制および促進と両方向に修飾されることから,GABAB受容体サブタイプの存在が考えられた。しかし,アデニル酸シクラーゼのサブタイプの存在が明らかになるにしたがい,同一のG蛋白質のβγサブユニットにより相反する調節を受けるアデニル酸シクラーゼがあることがわかってきた。
アドレナリン/ノルアドレナリン受容体
著者: 平澤明 , 辻本豪三
ページ範囲:P.358 - P.361
最も古くから解析されてきた受容体のひとつであり,G蛋白質に共役する典型的な7回膜貫通型受容体である。α1,α2,βアドレナリン受容体に大きく分けられ,それぞれがさらに3種ずつのサブタイプに分けられる。最近では,それらの各サブタイプに特異的な薬物も開発されてきている。
セロトニン受容体
著者: 吉岡充弘
ページ範囲:P.362 - P.364
G蛋白共役型の5-HT受容体には5種類のファミリーが含まれる。アデニル酸シクラーゼを抑制するG蛋白に共役している5-HT1受容体,ホスホリパーゼCを活性化するG蛋白に共役し,イノシトールリン脂質の代謝回転亢進を引き起こす5-HT2受容体,アデニル酸シクラーゼを活性化するG蛋白に共役している5-HT4,5-HT6,5-HT7受容体である。これらに加えて,5-HT5受容体遺伝子が同定されているが,G蛋白共役型であるかどうか不明である。このほかにも5-HT受容体には陽イオンチャネルを構成する5-HT3受容体も存在する(イオノトロピック受容体の項342頁参照)。それぞれのアゴニストおよびアンタゴニストについては表1に示す。
ドーパミン受容体
著者: 笹征史
ページ範囲:P.365 - P.368
ドーパミン受容体は膜を7回貫通するアミノ酸から成り,Gタンパクに共役する受容体である。この受容体にはD1,D2,D3,D4およびD5の5種のサブタイプが存在し,D1とD5受容体は薬理学的に同じ反応を示すためD1様受容体と称し,D2,D3,およびD4受容体はD2様受容体と呼ばれている。D1受容体にはバリアントは知られていないが,D5受容体はD5Pseudo-1と2の2種のバリアントが知られている。D2受容体はD2SとD2Lの2種が知られ,D2SはD2Lの細胞内第3ループの29個のアミノ酸を欠くものである。その他,数%の3種のバリアントがあるD3受容体(アミノ酸数400)のうち,全体の約28%の人は第9番目のセリンがグリシンに置換されたものを有し,さらに一部の分裂病患者では第6および7膜貫通部を欠く,短いアミノ酸数(342)を有するものがある。D4受容体は最も多くのバリアントを有し,現在11種のバリアントが知られている7,8)。
D1様受容体はGタンパクのGSに共役し,アゴニストによりアデニル酸シクラーゼを活性化し,cAMPを増量する。D2様受容体はいずれもGi/oに共役し,アデニル酸シクラーゼを抑制することによりcAMPを減量する。
ヒスタミン受容体
著者: 福井裕行
ページ範囲:P.369 - P.372
ヒスタミンH1受容体は種々の平滑筋,血管内皮細胞,副腎髄質,心臓,胎盤,中枢神経系に存在し,平滑筋の収縮,毛細血管の収縮による透過性亢進,血管内皮依存性弛緩因子(NO)の遊離,カテコラミン遊離,および中枢における覚醒,食欲調節,平衡感覚調節,神経内分泌調節,痙攣抑制の各作用を仲介することが知られる。H1受容体はロドプシン型受容体であり,Gq/11蛋白,ホスホリパーゼCβと共役する。H1拮抗薬のH1受容体に対する親和性は,ヒスタミンに比べて1,000-10,000倍高い1)。第二世代H1拮抗薬(非鎮静性H1拮抗薬)は第一世代より血液脳関門の透過性が低い2)。さらに,第二世代はH1受容体に対する特異性も高い。また,H1拮抗作用に加えてプロスタノイド,エイコサノイド,PAFの各受容体拮抗作用や肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制作用を併せもつ抗アレルギー薬も多数開発されている。
H2受容体は胃粘膜壁細胞,心房,平滑筋,リンパ球,中枢神経系に存在する。H2受容体もロドプシン型受容体であるが,GS蛋白,アデニル酸シクラーゼと共役する。H2作動薬のimpro-midineはその効力がヒスタミンに比べて遥かに(10-50倍)強い1)。
ムスカリン受容体
著者: 福崎厚 , 芳賀達也
ページ範囲:P.373 - P.376
ムスカリン受容体には5種の分子種(m1,m2,m3,m4,m5)が同定されており,それぞれが薬理学的に分類された5種のサブタイプ(M1,M2,M3,M4,M5)に対応する。いずれも7回膜貫通構造を持つG蛋白質共役型受容体であり,M1,M3,M5はGq共役型,M2,M4はGi共役型である1)。ムスカリン受容体は中枢神経(大脳皮質,海馬,小脳,線条体ほか),自律神経節および副交感神経終末,副交感神経支配臓器(心臓,内臓平滑筋,各種分泌腺ほか)など生体内に広く分布する2)。生体内リガンドはアセチルコリン(ACh)であり,AChのアミンは第3膜貫通領域Asp147の負電荷と相互作用するものと推定されている3)。ムスカリン受容体サブタイプ選択的アンタゴニストとして,従来よりpirenzepine(M1),AF-DX 116(M2),p-HHSiD(M3)などが知られるが4),最近ヘビ毒由来のきわめてサブタイプ選択的なリガンドが報告されている5)。また,ムスカリン受容体のアゴニスト結合部位とは別の部位(アロステリック部位)に結合して,特定のサブタイプとリガンドの結合に促進的または抑制的(正または負のアロステリック効果)に働く化合物が知られる6,7)。
メタボトロピックグルタミン酸受容体
著者: 水上令子 , 杉山博之
ページ範囲:P.377 - P.380
1.受容体研究の歴史
グルタミン酸受容体はその研究の当初においてはイオンチャネル型にのみ注意が払われてきた。しかしグルタミン酸もほかの多くの神経伝達物質と同様に,Gタンパク質と共役するタイプの受容体を活性化させることが見出され,メタボトロピックグルタミン酸受容体(mGluR)と名づけられた。培養神経細胞や脳スライスでイノシトールリン脂質分解を測定する系,およびアフリカツメガエル卵母細胞にmRNAを注入して受容体を発現させ,この受容体がGタンパク質を介してホスホリパーゼC(PLC)を活性化する結果引き起こされるC1-電流を検出する系によって,PLCを活性化してホスホイノシチドの代謝回転を促進するタイプの受容体の存在がまず明らかになった1,2)。1990年代に入って,メタボトロピックグルタミン酸受容体のクローニングが行われ,アデニル酸シクラーゼ(AC)を抑制してサイクリックAMP(cAMP)の産生を抑えるタイプの受容体も見出された3)。
2)ペプチド受容体
CCK受容体
著者: 宮坂京子 , 船越顕博
ページ範囲:P.381 - P.383
Cholecystokinin(CCK)の受容体にはCCK-A,-B受容体(CCK-AR,-BR)の2種が存在し,いずれも7回膜貫通型のG蛋白共役型伝達物質受容体である1)。CCK-ARはスルホン基を有するCCK(CCK-8 sulfated form:CCK 8S)に高い親和性を持ち,CCK-BRはスルホン基を有しないCCK(non-sulfated form,CCK-8 NS)にも同等の親和性を持つ(図1,表1)。ラットのCCK-ARとCCK-BRは50%のホモロジーを有し,主に膜貫通部位と第1,2細胞内ループに共通部位が多い1)。
脳におけるCCK-ARの分布はごく限られており,結合実験により確認されているのは,nucleus tractus solitarius,posterior nucleus accumbens,ventral tegmental area,substntia nigra,hyppocampus,hypothalamusなど,辺縁系のごく一部である。一方CCK-BRは大脳皮質を中心に大脳全体に分布する2)。
CRF受容体
著者: 今城俊浩 , 出村博
ページ範囲:P.384 - P.385
Corticotropin-releasing factor(CRF)は生体のストレスに対する反応に中心的な役割を担う視床下部ホルモンである。CRFは1981年Valeらによりヒツジ視床下部抽出物から構造が決定された。両生類(カエル)のsauvagineや魚類のurotensin-1とアミノ酸配列が類似しており,当時はこれらが両生類・魚類のCRFと考えられた。しかし,その後哺乳類のCRFと非常に相同性の高い(>90%)ペプチドが両生類・魚類に存在することが明らかとなった1)。そこで,哺乳類にもsauvagineやurotensin-1に相当するペプチドが存在すると推測された。
1993~95年にかけてCRF 1型受容体(CRFR-1)2),2型受容体(CRFR-2)3)がクローニングされた。CRFR-1,2ともに,7回の膜貫通領域を持つG蛋白共役型の受容体である。CRFR-2はR-1と71%の相同性を持ち,αとβのスプライスバリアントがある。CRFR-2に対してはsauvagineやurotensin-1のほうがCRFよりも高い親和性を持つことから,哺乳類でもR-2に結合するurotensin-1・sauvagine類似ペプチドの存在が確実となった。そこで,Valeらのグループはラット脳からCRFR-2に高親和性に結合するペプチドをクローニングし,urocortinと命名した4)。
アンジオテンシン受容体
著者: 岩尾洋
ページ範囲:P.386 - P.387
アンジオテンシン受容体はレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の中での生理活性を有する本体であるアンジオテンシンⅡ(AngII)に対する受容体であり,1型(AT1)と2型(AT2)の2種類の受容体がクローニングされ,さらにAng-(3-8)に対応する4型(AT4)やAng-(1-7)に対する受容体などのサブタイプの存在が示唆されている。AT1とAT2は共に7回細胞膜貫通型の受容体であるが,両者のアミノ酸の一次構造の相同性は低い。AT1受容体の細胞内シグナル伝達はCaを動員するG蛋白共役型の受容体で,Gi経由のサイクリックAMP系とGq経由のIP3系を介する。AT2受容体の細胞内シグナル伝達はホスホチロシンホスファターゼを介する。ジチオスレイトール(-SH試薬)によりAT1受容体はリガンドとの結合能力を失うが,AT2受容体は影響を受けない。ラット,マウスでは,AT1受容体にさらにサブタイプのATIA受容体とATIB受容体が存在するが,生理作用は両者ともに同じと考えられている。
Ang Ⅱの血管平滑筋収縮作用,末梢交感神経終末からのノルエピネフリン放出促進作用,副腎髄質からのアドレナリン分泌作用,副腎皮質からのアルドステロン分泌作用,心血管系のリモデリングや細胞増殖作用など,現在までに知られている生理作用の殆どすべてがAT1受容体を介する作用で,非ペプチド性AT1受容体拮抗薬により阻害される。
エンドセリン受容体
著者: 山下康子 , 谷山紘太郎
ページ範囲:P.388 - P.391
エンドセリン(ET)は1988年にブタ大動脈由来血管内皮細胞の培養上清から単離・精製された,21個のアミノ酸からなる血管収縮ペプチドであり1),ET-1,2,3の三つのアイソフォームが存在する。その受容体として,現在のところETA,ETBおよびETCの3種類が存在するが,ETC受容体はアフリカツメガエルのdermalmelanophoreからクローニングされたものの2),哺乳動物ではまだ確認されていない。ETA受容体はET-1≧ET-2≫ET-3,ETB受容体はET-1=ET-2=ET-3の結合特性を示す。ETC受容体はET-3により高い親和性を示す。いずれの受容体も7個の膜貫通領域を含むG蛋白質共役型受容体スーパーファミリーに共通の構造をもつ。
ヒト組織でもETAおよびETB受容体は広範囲に発現しており,血管においては,ETA受容体が平滑筋細胞に存在して収縮反応に,またETB受容体は内皮細胞に存在して一酸化窒素(NO)およびプロスタサイクリンの産生を介して弛緩反応に関与すると考えられている。しかし,ウサギ伏在静脈などにおいてはETA受容体アンタゴニスト抵抗性のET-1による収縮反応が報告されており,ETB受容体のサブタイプの存在が示唆されている。
オピオイド受容体
著者: 佐藤公道 , 南雅文
ページ範囲:P.392 - P.395
オピオイド受容体は,1940年代からmor-phineなどのアヘンアルカロイドの生体内における作用点としてその存在が想定されていた(当時はオピエート(opiate)受容体と呼ばれていた)が,1973年に放射性標識されたアヘンアルカロド類縁体を用いた結合実験により,中枢および腸管内神経でその存在が初めて確認された。
本来動物体内に存在しないモルヒネあるいはその類縁体に対する特異的受容体が脳内に存在することから,内因性モルヒネ様物質の存在が推定され,精力的な探索が行われた結果,1975年に2種のenkephalinが発見され,続いてβ-endorphin,dynorphinなどの内因性オピオイドペプチドが単離・構造決定された。さらに,昨年にも新しい内因性オピオイドペプチドの存在が報告されており,endomorphinと命名されている1)。
ガラニン受容体
著者: 藤田道也
ページ範囲:P.396 - P.397
ガラニン受容体galanin receptor(GALR)は他のGタンパク共役型受容体(GPCR)と共通して7個の膜貫通ドメインをもち,他のGPCRと相同性を示す。
薬理効果はATP感受性K+チャネルの活性化,アデニル酸シクラーゼの阻害,電位依存性Ca2+チャネルのブロック,ホスホリパーゼCの活性化,インスリン・ソマトスタチン分泌の阻害,成長ホルモン・LH(LHRH)・PRL・TSH放出の亢進,節食行動の促進,迷走神経の抑制,収縮期血圧の低下,腸管運動の抑制,抗痛覚受容作用,オピオイド作用の増強などである。しかし,薬理効果には種差がある。例えば,ヒトではインスリン分泌に影響を与えない。
タキキニン受容体
著者: 鈴木秀典
ページ範囲:P.398 - P.400
哺乳類のタキキニン受容体は現在NK1,NK2,NK3の3種類が知られており,それぞれの受容体に対して,タキキニンと総称される神経ペプチドのうちsubstance P(SP),neurokinin A(NKA),neurokinin B(NKB)が高い親和性を持つ。3種類の受容体間の相同性はアミノ酸レベルで約70%である。細胞内情報伝達系に関しては,いずれの受容体もGタンパク質と共役し,主にイノシトールリン脂質代謝を活性化する。受容体の分布は大まかにいえば,NK1受容体は末梢組織と中枢神経系,NK2受容体は末梢組織,NK3受容体は中枢神経系に存在する1)。しかし,受容体とリガンドであるタキキニンの間にはその分布にミスマッチもある。たとえば,脊髄後角においてNKAが存在し,NKA適用によって脊髄細胞の脱分極も観察されるが,NK2受容体はほとんど存在しない2)。このような組織においては,NKAはNK1受容体に作用している可能性もある3)。
最近になって,非定型的なオピオイド受容体として知られていたhKIRがNKBに高い親和性を持ち,アフリカツメガエル卵母細胞に発現させるとNKB刺激によってCa2+依存性Cl-電流が観察されることが報告された4)。
ナトリウム利尿ペプチド受容体
著者: 遠山育夫 , 鈴木幹男 , 北野博也
ページ範囲:P.401 - P.402
ナトリウム利尿ペプチド受容体は少なくとも3種類,A受容体(NPR-A;GC-A),B受容体(NPR-B;GC-B)およびC受容体(NPR-C)が存在する1)。最近,ウナギでC受容体によく似た構造のD受容体が報告されたが2),ヒトやラットでの詳細がまだ明らかでないので,本項では触れない。
上記3種類のナトリウム利尿ペプチド受容体は,いずれも1回膜貫通型の構造をしている。NPR-AおよびNPR-Bは細胞質内にグアニル酸シクラーゼドメインをもち,セカンドメッセンジャーとしてcGMPを増加させる。NPR-Cはグアニル酸シクラーゼドメインを欠き,ナトリウム利尿ペプチドのクリアランスに関与すると考えられている1)。
ニューロテンシン受容体
著者: 遠山正彌
ページ範囲:P.403 - P.404
ニューロテンシン(NT)は1973年にCarraway & Leemanによりウシ視床下部より分離されたペプチドで,13個のアミノ酸よりなる。NTは類似ペプチドであるニューロメジンN,ニューロメジンN様ペプチドと同一の遺伝子によりコードされている。NTの神経系における役割はよくわかっていない。NTの中枢性作用としては黒質一線条体ドーパミンシステムの調節(ドーパミンの代謝回転や遊離の促進),侵害刺激伝達の抑制,低体温をもたらすこと,ノルアドレナリンやダイノルフィン投与により引き起こされる摂食行動の抑制などが知られている1,2)。末梢作用としては血管拡張に伴う降圧,回腸の収縮,十二指腸の拡張,胃酸分泌の抑制,血糖上昇(血中のグルコースやグルカゴンの上昇,インスリン低下),ACTH,FSH,LHの分泌促進作用が報告されている1,2)。NT8-13がNT作用の発揮に重要である。
NT受容体は現在のところ高親和性受容体と低親和性受容体の2種が存在する1,2)。高親和性受容体のKdは1nM以下(O.13nM)であり,低親和性受容体のKdは1nM以上である(2.4nM)。高親和性受容体は424アミノ酸よりなるG蛋白共役型膜7回貫通型受容体である。IP3/DGシステムを介して,細胞内カルシウムイオン濃度とPKC活性を調節する。
レプチン受容体
著者: 村上尚 , 島健二
ページ範囲:P.405 - P.406
レプチンは146アミノ酸からなり,脂肪細胞から分泌される摂食抑制因子(満腹シグナル因子)であるが1),これ以外に交感神経活性化などの多彩な作用を持つことも明らかになっている2,3)。体脂肪量が増加すると血中レプチン濃度が上昇し4,5),結果として摂食が抑制され6-8),摂取エネルギー量が減少するのと同時に,交感神経系の活動の亢進によってエネルギー放出量が増加し,体脂肪量減少傾向へと向かう9)。一方,体脂肪量が減少すると血中レプチン濃度が低下し,熱産生が低下する。また,過度の“やせ”となり血中レプチン濃度が非常に低くなると,生殖能など生きることに必須ではない種々のエネルギーを使わないように適応する10)。レプチンと同一の活性を示すアゴニストおよびその作用に拮抗するアンタゴニストは,合成化合物の中では見出されていないが,このレプチンの生物活性に,レプチンに1ヵ所存在するS-S結合が重要であることが示唆されている11)。また,128番アミノ酸アルギニンをグルタミンに置換したヒトレプチンが,アンタゴニストとしての作用を持つことが報告されている12)。
レプチン受容体(OB-R)はG-CSF受容体,LIF受容体,gp 130,GH受容体,プロラクチン受容体などを含むⅠ型サイトカイン受容体ファミリーに属し,N末端が細胞外に存在し,膜を1回貫通する糖蛋白質である13-15)。
3)エイコサノイド受容体
カンナビノイド受容体
著者: 杉浦隆之 , 和久敬蔵
ページ範囲:P.407 - P.409
カンナビノイドとはマリファナの活性成分である⊿9-テトラヒドロカンナビノール(⊿9-THC)を中心とする一連の化合物の総称である。カンナビノイドに対する受容体が脳に存在していることは,構造活性相関の実験結果などから以前より予想はされていたが,⊿9-THCやそのアナログの場合,非特異的結合が非常に大きく,結合実験を行っても特異的結合を検出することはなかなか困難であった。最終的な証明は非特異的結合が小さく,強力な活性を有する合成カンナビノイド,[3H]CP 55940を使うことによりなされた。そして,1990年にはアメリカのグループによって,ラットの脳cDNAライブラリーからクローニングされていた7回膜貫通,Gタンパク質共役型のオーファン受容体の遺伝子が,実はカンナビノイド受容体の遺伝子であることが明らかにされた1)。現在ではこの受容体はカンナビノイドCB 1受容体と呼ばれており,脳をはじめ精巣,子宮,肺など様々な臓器に広く存在していることがわかっている。脳では黒質,淡蒼球,海馬,小脳の分子層などで特に多量に発現している。CB 1受容体はラットでは473個,ヒトでは472個のアミノ酸からなっている。ついで,1993年には脾臓に多量に発現しているカンナビノイド受容体の遺伝子としてCB 2受容体の遺伝子がクローニングされた。
プロスタノイド受容体
著者: 根岸学 , 加藤裕教
ページ範囲:P.410 - P.411
プロスタノイドは細胞外からの生理的病理的な刺激に応じてアラキドン酸から生成される生理活性物質であり,産生された局所で多彩な作用を発揮し,生体のホメオスタシスの維持に関わる重要なオータコイドである。主要なプロスタノイドはPGE2,PGI2,TXA2,PGD2,PGF2αであり,それぞれに対応する受容体はEP,IP,TP,DP,FPと呼ばれ,EPにはさらに四つのサブタイプEP 1,EP 2,EP 3,EP 4が存在する。これら8種類の受容体はすべてG蛋白質共役ロドプシン型受容体構造をしており,異なるG蛋白質を介して,イノシトールリン脂質代謝系,Ca2+動員系(EP 1,TP,FP),アデニル酸シクラーゼ活性化(EP 2,EP 4,IP,DP),アデニル酸シクラーゼ抑制系(EP 3)と共役している1)。
プロスタノイドの薬理作用は様々な平滑筋の収縮を指標にしたバイオアッセイ系や血小板の凝集などによる解析が主であったが,クローニングされた受容体の発現系を用いた生化学的な解析が進んでおり,表1に示した今までのアゴニスト,アンタゴニストの効力の再評価が詳細になされている2)。プロスタノイドは中枢においても様々な作用を発揮する。PGE2は発熱,痛覚修飾や覚醒誘導を起こしたり,様々な神経終末からの神経伝達物質の遊離を抑制する。
3.その他
シグマ受容体
著者: 氏家寛
ページ範囲:P.412 - P.416
シグマ(σ)受容体はMartinら1)により,mor-phine誘導体のbenzomorphan類のmorphineとは異なる生理作用,特に精神病症状惹起作用を媒介するオピオイド受容体の新しいサブタイプとして概念的に提唱された。また,プロトタイプのSKF-10047がσ受容体以外にNMDA型グルタミン酸受容体イオンチャネル遮断作用(すなわちPCP site)も有していたため,これらとの異同について混乱が生じていた。後に,結合阻害実験やオートラジオグラフィーにより別のものであることが確立され,1987年の国際会議で“non-opiopid,non-pcp,haloperidol-sensitive site”として定義された2)。しかし,σ受容体はphencyclidine(以下PCP)やオピオイドアゴニストと相互作用するため,過去の混乱を引きずった誤った記載が最近でも散見されている。
σ受容体が関与する可能性のある生理作用は多岐にわたっており,それらの生理作用におけるσ受容体の関与の詳細な機構は明らかではない。
Ⅱ.チャネルに作用する薬物
Ca2+チャネル
著者: 河西春郎
ページ範囲:P.418 - P.420
細胞膜のCa2+チャネルには,興奮性細胞の膜電位依存性Ca2+チャネル(voltage-dependent Ca2+-channels,VDCCs)以外にも,非興奮性細胞にはストア作動性Ca2+チャネル(store-operated Ca2+channels,SOCs)があることが知られてきた。SOCsはまだ分子の同定や選択的阻害剤の発見には至っていない1)。VDCCsはα1,α2δ,β,γのサブユニットからなることが,特に筋肉のそれでわかっている。このうちα1が6回膜貫通構造を四つ連結して持つ典型的な膜電位依存性チャネル族の分子で,Ca2+チャネルの機能発現には不可欠で,他のサブユニットは機能発現や修飾に関係している。α1サブユニットは分子生物学的に現在8種類知られており,生理的薬理的分類との対応づけが進んできた(表1)2,3)。
VDCCsは活性化するのに必要な電位の大きさから,高電位活性型(high-voltage-activated,HVA)と低電位活性型(low-voltage-activated,LVA)の二群にわかれる。HVA型はだいたい-30mVよりプラスの膜電位から活性化する。これに対して,LVA型はだいたい-60mV以上で活性化し,膜電位依存性の不活性化が強く,-50mVよりプラスの保持電位では完全に不活性化する。
Cl―チャネル
著者: 稲垣千代子 , 入江貴雄
ページ範囲:P.427 - P.429
Cl-チャネルには神経伝達物質受容体が内蔵するもの(GABAA受容体,グリシン受容体など)のほか,CFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)Cl-チャネル,電位依存性Cl-チャネル(CIC-1,CIC-2,CIC-5),Ca2+依存性Cl-チャネル,maxiCl-チャネルおよびvolume regulated anion channel(VRAC)として分類されるものなどがある1,2)。Cl-チャネルに作用する薬物には促進剤と阻害剤がある。
Cl-チャネル内蔵受容体にはGABAA受容体,グリシン受容体,ある種のニコチン性アセチルコリン受容体(軟体動物)および抑制性グルタミン酸受容体(線虫類,甲殻類,IGluRs)がある。これらに対する促進薬と阻害薬については,それぞれの受容体作用薬の項で述べられる。
K+チャネル
著者: 赤須崇
ページ範囲:P.430 - P.432
K+チャネルは静止電位や活動電位を決定することで細胞の興奮性を制御するのみならず,細胞の容積の調節,ホルモンや伝達物質の放出にも貢献する。K+チャネルには膜電位によって制御されるものや,G蛋白を介してホルモンや伝達物質によって制御されるものがある。これらの調節機構はシナプス伝達の効率を変えたり,虚血,低酸素症に対する細胞の防御に役立っている。遺伝子のクローニング技術の進歩によってK+チャネルは6回膜貫通型(KV),2回膜貫通型(KIR),1回膜貫通型(minKもしくはISK)に分類され,さらに2リピート型のものまでみつかっている。本稿では,K+チャネルの構造,機能の多様性と類似性,およびチャネルに作用する物質について述べる。尚,分子生物学的アプローチについては最近の総説を参照していただきたい1,2)。
Na+チャネル
著者: 瀬山一正
ページ範囲:P.433 - P.436
Naチャネルは限られた時間に細胞外から内へ電気化学ポテンシャルに従ってNa+を通す,細胞膜に組み込まれた蛋白質でできた装置である。この装置によって最も速い信号が発生し,神経系,骨格筋,心筋の機能を制御することが可能となっている。40年前に,HodgkinとHuxleyによって著されたNa説は,今日でもあらゆる興奮細胞の活動についての基本的な枠組みとなっている。Na説によるとNa+チャネルは膜電位が脱分極すると,イオンの透過を制限しているゲートが開く(活性化)が,膜の脱分極が持続してもゲートは閉じてイオンが透過しない状態(不活性化)に移行する。また,ゲートは膜電位変化によって急激な開閉を起こすので,ゲート機構の働く前に膜電位変化に応じて荷電の多い粒子かまたは双極子が膜内で移動する機構が存在すると推測している。
1984年に沼研究室から電気ウナギの電気器官のNaチャネルの一次構造に関する論文が世界に先駆けて発表された。それ以来,この蛋白質について機能一構造相関の研究が分子生物学的方法を用いて急速に進展しつつある。膜電位依存性Na+チャネルは約240-280KDのαサブユニットに,約30KDの二つのβサブユニットをともなっていることが明らかになった。主要なチャネル機能であるイオン選択性とゲート機構はαサブユニットにあるが,βサブユニットはチャネル機能の修飾を行っている。
細胞内Ca2+放出チャネル
リアノジン受容体とIP3受容体―リアノジン受容体
著者: 飯野正光
ページ範囲:P.421 - P.423
小胞体膜上に存在するCa2+放出チャネルである。約5,000個のアミノ酸から成る蛋白質が四量体としてチャネルを形成する。3種類の遺伝子が存在して,1,2,3型のサブタイプがある。これらはホモ四量体を形成するが,発現分布と機能を異にしている。1型と2型はそれぞれ骨格筋と心筋の興奮収縮連関に関与している。また,中枢神経系と平滑筋細胞にも存在するが,その機能はまだ十分に明らかでない。一方,3型は中枢神経系と骨格筋を含んで広く全身で発現が認められ,少なくとも中枢神経系の機能に関与することがノックアウトマウスの行動から推測されている。
植物アルカロイドのryanodineが強く結合するためにこの名称があるが,ryanodineは動物の生体内での生理的なアゴニストではない。生理的な活性化因子として最も重要なのはCa2+イオンであり,このためCa2+によるCa2+放出(Ca2+-induced Ca2+release,CICR)機構1)とも呼ばれる。カルシウムに対する感受性は,2型>1型>3型の順で高いとする考えが有力である。骨格筋の興奮収縮連関では,ジヒドロピリジン受容体(L型電位依存性カルシウムチャネル)からの直接の情報を受け取って開口する。また,カルモジュリンもリアノジン受容体の機能を制御し,低濃度Ca2+存在下では促進作用を,数μM以上の高濃度Ca2+存在下では抑制効果を現す。
cADPR/Ryanoid-ICR
著者: 村山尚 , 小川靖男
ページ範囲:P.424 - P.426
受精時には卵細胞の細胞内カルシウムイオン(以下,Ca2+)濃度が急激に上昇し,これが受精後のさまざまな反応の引き金となることが知られている。このCa2+上昇は細胞内Ca2+ストアからのCa2+遊離であることがわかっていて,ハムスター,マウスの卵ではイノシトール-1,4,5-3リン酸(IP3)誘発性Ca2+遊離(IP3-induced Ca2+release;IICR)機構が主要な経路であることが示されている。これに対して無脊椎動物のウニ卵では,IICRの阻害薬であるヘパリンを注入しても依然としてCa2+上昇が見られることから,ほかの機構を介している可能性が示唆されていた。最近になってサイクリックADPリボース(cyclic ADP-ribose;cADPR)とニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinic acid adenine dinucleotide phosphate;NAADP)という2種類の物質が同定され,それぞれがCa2+遊離作用を持つことが明らかとなった1)。本稿ではcADPRおよびNAADPによるCa2+遊離機構について概説し,関連する薬物について述べる。
Ⅲ.トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
GABA
著者: 山本由美子 , 大和谷厚
ページ範囲:P.438 - P.440
抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)は,GABA作動性神経から遊離された後,神経終末およびグリア細胞にあるGABAトランスポーターの働きにより細胞外液中から取り除かれる。このGABAトランスポーター(以下,GAT)については,1990年Guastella1)らによりラットGAT-1がクローニングされて以来,現在までに少なくとも4種のサブタイプの存在(GAT-1,GAT-2,GAT-3,BGT-1)が知られている。BGT-1は当初,腎臓での浸透圧維持に関わるベタインのトランスポーターとして発見されたが,高いGABA輸送能をもつことから,ベタイン/GABAトランスポーター(BGT)と命名されたものである。これら4種のGATはすべて12回膜貫通型のNa+-Cl-イオン共役型トランスポーターファミリーに属し,GAT-1とGAT-3は神経系に,GAT-2は神経系以外に,BGT-1は両者に分布している。
なお,GATのサブタイプの呼称についてラット,ヒト,イヌではGAT-1,-2,-3,BGT-1,マウスではGAT 1,2,3,4とされているが,遺伝子配列から判断すると,GAT-1とGAT 1,GAT-2とGAT 3,GAT-3とGAT 4,BGT-1とGAT 2が相同であると考えられる。また,かってGAT-A,-BとされたものはGAT-1,-3のことである。
アセチルコリン
著者: 五十嵐康
ページ範囲:P.441 - P.444
コリン作動性神経の伝達物質であるアセチルコリン(ACh)は,少なくとも神経終末でコリン(Ch)とアセチルCoA(Ac CoA)を基質としてコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)により合成される(図1-①)1,2)。この酵素は可溶性蛋白で細胞質に存在することから,AChは細胞質で合成されたのちシナプス小胞へ取り込まれると考えられている(ACh取り込み機構3),図1-②)。いくつかの神経系はコリン神経との間にシナプスを形成し,その神経活動を制御している(図1-③)4-6)。種々要因によってコリン神経に伝達されたインパルスはCa2+チャネルを開口させ,終末細胞質内へのCa2+流入を引き起こす(図1-④,⑩)7,8)。それが引き金となり,小胞内AChがエキソサイトーシスにより放出される(図1-⑤)1,2)。シナプス間隙へ放出されたAChは,後シナプス受容体に作用して伝達効果を発現する(図1-⑥)。また,コリン神経終末には前シナプス性ムスカリン受容体(自己受容体)が存在し,負のフィードバック機構を形成し,ACh放出量の自己調節に関与している(図1-⑦)9,10)。
アデノシン
著者: 秦順一 , 賀来智宏
ページ範囲:P.445 - P.447
中枢神経系ではアデノシンは生理的条件下では神経伝達を修飾し,病理的条件下では多量に遊離され,神経保護作用をもつ1-3)。
細胞内ではアデノシンは5'-ヌクレオチダーゼによって5'-AMPが脱リン酸化されて産生される(図1)3-5)。また,S-アデノシルホモシステイン(SAH)からSAHヒドラーゼにより,アデノシンは産生される。アデノシンはアデノシンキナーゼ(ADK)によってリン酸化されて5'-AMPとなるか,あるいはアデノシンデアミナーゼ(ADA)によって脱アミノ化されてイノシンに分解される。アデノシンはアデノシントランスポーターによって細胞外に遊離される。また,補助伝達物質としてATPはエキソサイトーシスにより他の伝達物質と共に遊離される。ADKはラットやヒト脳では均等に分布しているのに対して,ADAはラット脳では不均等に分布している。ADAはオリゴデンドログリアや内皮細胞に多く存在するが,ニューロンにもある。細胞外ではエクト-5'-ヌクレオチダーゼによって5'-AMPが脱リン酸化されて,アデノシンは産生される。エクト酵素であるADAによりイノシン,ヒポキサンチンに分解される。
アラキドン酸
著者: 大地陸男 , 立山充博 , 岡田隆夫
ページ範囲:P.448 - P.450
アラキドン酸arachidonic acid(AA)は炭素数20,二重結合数4の不飽和脂肪酸である。膜を構成するリン脂質にはホスファチジルコリン(PC)やホスファチジルエタノールアミン(PE),ホスファチジルイノシトール(PI)などがあり,ジグリセリドのglycerolの1,2位に脂肪酸がエステル結合している。2位の脂肪酸は不飽和脂肪酸の割合が大きく,AAを多く含んでいる。ホスホリパーゼA2(PLA2)は2位のエステル結合を加水分解し,リゾリン脂質と脂肪酸を遊離する1)。PE,PC,PIやジアシルグリセロールからPLA2によってAAが切り出される。PCにPLA2が作用すると,AAと膜障害性のあるリゾホスファチジルコリンが生ずる(図1)。PLA2の種類は多い2)。リン酸化部位があり,増殖因子のEGF, TGFαなどによりMAPキナーゼが活性化されると,このリン酸化が起こり,PLA2が活性化される。Ca2+は活性化されたPLA2を膜へ移行させ,酵素活性を増強する3)。従って,細胞内のCa2+を増大させる多様な刺激が,AAの関連した調節をもたらし,Ca2+の動態に関連する薬物がこれを修飾する。AA自体にはK+チャネル活性化4)やホスファターゼを活性化してL型Ca2+電流抑制をもたらす作用がある。AA分子は不飽和結合により屈曲しているので,一般に膜の流動性を増す作用がある。
グルタミン酸
著者: 島崎久仁子
ページ範囲:P.451 - P.453
グルタミン酸は脳における主要な伝達物質であり,脳内の約40%がグルタミン酸作動性シナプスであるといわれている。グルタミン酸作動性シナプスにおいては,酵素的にグルタミン酸を不活化する機構が備わっていない。これを担当するのがグルタミン酸トランスポーターである。ニューロンとグリアに存在するグルタミン酸トランスポーターとしてはGLAST(EAAT1),GLT-1(EAAT 2),EAAC 1(EAAT 3)とEAAT 4が報告されており,異なる分布を示す(表1)。最近クローニングされたEAAT 5は網膜に多く,脳には殆どない1)。グルタミン酸トランスポーターは独立のファミリーを形成し,他の伝達物質トランスポーターとの相同性はない。
サブスタンスP
著者: 鈴木秀典
ページ範囲:P.454 - P.456
substance P(SP)は哺乳類においてneuro-kinin A(NKA)およびneurokinin B(NKB)と共にタキキニンtachykininsと呼ばれる一群の神経ペプチドに属し,11個のアミノ酸からなる。SPとNKAは共通のpreprotachykinin A(PPT-A)遺伝子に由来し,RNAスプライシングによってできる3種類のmRNAを介して生成される1)。SPは生体に広く分布し,特に脊髄後角,中脳黒質などに多く存在する2)。SPの神経伝達物質としての作用は脊髄においてよく調べられている。すなわち,SPは脊髄後角に終止する一次求心性線維の一部,主に無髄のC線維中に含まれ,刺激によって神経終末から放出され,脊髄後角ニューロンに時間経過の遅い興奮性シナプス後電位(slow EPSP)を引き起こす2)。C線維は痛みを伝える神経線維であるので,SPは痛覚伝達に関わる伝達物質と考えられる。SPをコードするPPT-A遺伝子をノックアウトすると,急性の痛覚刺激(熱および機械的刺激)に対する反応は変化しないが,強度の痛覚受容や痛覚過敏状態における反応が減弱する3)。また,SPに高い親和性を持つNK1受容体遺伝子をノックアウトしても,C線維の反復刺激によって引き起こされるC線維応答の増強現象(wind up)がみられなくなる4)。すなわち,SPは強い痛みの伝達や痛覚過敏の維持に特に関与する可能性がある。
セロトニン
著者: 岸昭宏 , 山本経之
ページ範囲:P.457 - P.459
セロトニン(5-HT)の脳における存在は,Twarog & Pageによって明らかにされた。この発見を契機に脳内における神経伝達物質としてのセロトニンの生理的役割およびその欠損に伴う病態が明らかにされてきた。一般に,伝達物質は神経インパルスに応じて神経終末部から遊離されたのち,一部は受容体に作用するが,他の大部分(80%)は再び終末部に取り込まれる。伝達物質の不活性化機構には伝達物質の酵素分解とともに,この再取り込み機構が重要な役割を演じている1)。能動輸送形態をとり,ラットの脳シナプトソームを用いて測定した[3H]5-HTの取り込みのK1(親和性)およびVmax(密度)値には脳の部位による差が認められ,いずれも辺縁系-線条体が大脳皮質,間脳および下位脳幹のそれよりも高い。
本項では,セロトニンの神経終末部での遊離および取り込み機構に影響を及ぼす薬物をあげ,概説する。
ドーパミン
著者: 島添隆雄 , 渡辺繁紀
ページ範囲:P.460 - P.463
ドーパミンは1959年のHoltzの報告を端緒として研究が進展し,脳内神経伝達物質の一つであることが証明された。ドーパミン神経系は大きく以下の三つの系統に分けられる。黒質―線条体系は黒質(A9),中脳網様体(A8),腹側被蓋野(A10)から線条体への投射系で,錐体外路系における運動機能に中心的役割を果たす。中脳一辺縁系は黒質(A9),中脳網様体(A8),腹側被蓋野(A10)から辺縁系皮質および辺縁系への投射系で,精神分裂病などの精神疾患との関わりが深いと考えられている。もう一つが漏斗―下垂体系で間脳(A11-A15)から下垂体間葉,正中隆起などへの投射系で,ホルモン分泌の調節機能を有している。
ドーパミンの放出には,活動電位に基づくCa2+依存性のものとCa2+非依存性,Na+依存性でドーパミントランスポーターの逆回転によるものとが考えられている。放出されたドーパミンは,一部は分解酵素[モノアミンオキシダーゼ(MAO),カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)]による代謝を受け不活化されるが,大部分はドーパミントランポーターによって再び神経終末に取り込まれる。
ノルアドレナリン
著者: 五嶋良郎
ページ範囲:P.464 - P.467
ノルアドレナリンは哺乳類における交感神経節後線維終末における化学伝達物質である。ノルアドレナリンは中枢神経においても伝達物質として作動すると考えられる。実際,モノアミンの枯渇を引き起こすレセルピンがうつ症状を引き起こし,逆にその取り込みを阻害し,そのシナプス間隙濃度を増加させるメタンフェタミン,コカイン,イミプラミンなどの薬物が躁状態を引き起こす。抗うつ薬が投与直後より脳内モノアミンの再取り込みを阻害するにも関わらず,臨床効果が発現するのにより長期間を要する理由は不明である。しかし,現在抗うつ効果を有する薬物の多くがノルアドレナリン,セロトニンなどの取り込み阻害活性を示す事実は,同活性が抗うつ効果発現に直接あるいは間接に関与することを示唆する。この時間的乖離の一つの説明は,抗うつ薬投与初期に取り込み阻害により増大したシナプス間隙におけるアミンが,それらの放出を抑制性に制御するシナプス前(自己)受容体(後述)に脱感作を引き起こし,それにより二次的に負の制御が低下して逆に放出量が増えるというものである1)。1991年にコカインおよびノルアドレナリンに感受性のあるトランスポーターが分子的に同定され2),以来,その他の様々な神経伝達物質のトランスポーターが次々とクローニングされた3)。
Ⅳ.代謝的に作用する薬物
DOPAデカルボキシラーゼ
著者: 加世田俊 , 野元正弘
ページ範囲:P.470 - P.471
DOPAデカルボキシラーゼ(芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ)はピリドキサルリン酸を補酵素として含み,DOPAや5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)などの芳香族L-アミノ酸を基質としてこれを脱炭酸することによりドパミンやセロトニンを生成する酵素である。基質とする芳香族L-アミノ酸は多数存在するが,中でもDOPAと5-HTPに対する親和性が高く,チロシン・フェニルアラニン・トリプトファンには親和性が低い。DOPAに対しては低いKm値に高いVmax値を示し,内因性DOPAは即座にドパミンに変換されるため,カテコラミン含有組織中のDOPA濃度は極めて低い1)。DOPAデカルボキシラーゼの分布は副腎髄質,腎臓,肝臓,松果体ほか多岐にわたり,脳ではドパミン,ノルアドレナリン,セロトニン酸性細胞である黒質,青斑核,縫線核に高濃度に存在する。
DOPAデカルボキシラーゼに作用する薬物としては,その阻害剤としてcarbidopaおよびbenserazideが知られている。これらはパーキンソン病の薬物治療で,levodopa(L-DOPA)と併用されている。L-DOPAは単剤では脳へ到達する前にDOPAデカルボキシラーゼによって99%以上が代謝され,脳への到達率の低いドパミンに生成される。末梢ドパミンの増加によって消化器症状や循環器症状などの副作用が生じる。
アセチルコリンエステラーゼ
著者: 田中健一 , 小川紀雄
ページ範囲:P.472 - P.474
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は神経伝達物質であるアセチルコリン(AChR)の分解酵素として,アセチルコリン受容体(AChR)近傍に局在する。AChEは中枢神経系・骨格筋・赤血球・運動終板などに多く存在する。一方,平滑筋や血清中にはブチルコリンエステラーゼ(BuChE)が多く存在するが,100%阻害してもヒトの機能には影響しない。ただし,薬効の特異性を考える上で重要である。AChEに直接作用する薬物の多くは酵素活性を抑制する阻害剤であることから,本稿では治療を目的としたAChE阻害剤を中心に記した。AChE阻害剤には,治療薬以外にも農薬である有機リン系殺虫剤やカーバメート剤,サリンなどの神経ガスが含まれる。特に農薬類は日常でよく認められる中毒の一因として重要であるが,紙面の都合で省略した。現在治療薬としては,重症筋無力症(MG)や緑内障(Gla)を対象とした薬剤とPamが主なものである。また,第一世代の抗痴呆(ATD)薬の多くはAChE阻害剤である。本邦では開発中だが,欧米では既にtacrine,donepezil,rivastigmineが認可され,AChE阻害剤の新しい可能性が示された。なお,抗ATD薬の多くは開発中のためデータが公開されているものに限定した。また,できる限り最新データを参考にしたが,updateな情報についてはインターネットによる検索aをお奨めする。
アロマターゼ
著者: 沼澤光輝
ページ範囲:P.475 - P.477
アロマターゼはアンドロゲンのアンドロステンジオンやテストステロンを,エストロゲンのエストロンやエストラジオールに変換するP-450酵素である。本酵素は503個のアミノ酸からなる分子量55kDaの蛋白で,小胞体に局在し,ほかのP-450との構造上の相同性は低い。本酵素の阻害剤はエストロゲン産生を選択的に抑制することから,乳癌,子宮癌,子宮内膜症,子宮線維腫,前立腺の癌や肥大症などのエストロゲン依存性疾患に適応できる。
アロマターゼ活性は胎盤,卵巣,精巣や脂肪組織などにみられ,閉経前の女性では卵巣が,一方,閉経後は脂肪組織がエストロゲンの主な産生臓器となる。アロマターゼはフラビン蛋白NADPH-P-450還元酵素を経由してNADPHより電子を受け取り,3回連続してアンドロゲンの19位メチル基を酸素化する。このとき3分子のNADPHと3分子の酸素が要求されるが,19-ヒドロキシ体→19-オキソ体を経て19-メチル基がギ酸として脱離するとともに,1β,2β水素が立体選択的に除去され,エストロゲンが産生する。
一酸化窒素合成酵素
著者: 横井功
ページ範囲:P.478 - P.480
L-arginine(Arg)からNOを合成する一酸化窒素合成酵素(NOS)は,いろいろな種類の細胞に備わっている。このため,一般にはNOSをその性質から,1)血管内皮細胞に存在するeNOS,2)lipopolysaccharide(LPS)などにより誘導されるiNOS,および3)構成酵素であるcNOSとに大別している。神経細胞に含まれるNOSはcNOSであるが,nNOSあるいはbNOSと呼ぶことがある。NOSはNOの合成のために基質であるArg,補酵素のFAD,FMN,tetrahydrobiopterin(H4BP),さらにNADPH(酸素供給源)を必要とする。また,eNOSとcNOSは酵素分子に結合したcalmodulinにCa2+が結合することにより活性化される。従って,NOSと基質の結合に影響する薬物(特異的NOS阻害剤)のほか,これらの補酵素などの代謝に影響を与える薬物(非特異的NOS阻害剤)もNOS活性に影響を与える。本稿では市販薬物に的を絞って紹介する。
カテプシン
著者: 唐渡孝枝 , 木戸博
ページ範囲:P.481 - P.484
カテプシンは触媒活性の発現に必要なアミノ酸残基に基づいて,システインプロテアーゼ(カテプシンB,C(J),H,K(O),L,S,U,W),アスパラギン酸プロテアーゼ(カテプシンD,E),セリンプロテアーゼ(カテプシンA,G)に区分でき,その性質に従って阻害剤を分類することができる(表1)。
チロシンヒドロキシラーゼ
著者: 小島幸一 , 永津俊治
ページ範囲:P.485 - P.487
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)の阻害剤は,本酵素がカテコールアミン(ドーパミン,ノルアドレナリン,アドレナリン)の生合成の律速段階であり,脳内カテコールアミンニューロンや末梢交感神経ノルアドレナリンニューロンの活性を低下させて,抗高血圧作用,鎮静作用など広範囲な薬理作用と臨床応用が期待されて,1964年のTH発見当時1)から,阻害剤の研究が広範囲に展開された。
最初に発見されたTHの阻害剤は,酵素反応の終末生成物のカテコールアミンそのものであり,ノルアドレナリン(終末産物)が生合成第1段階のTHを阻害することから,フィードバック調節の仮説が提唱された1)。ノルアドレナリンによる本酵素の阻害は,天然型補酵素のテトラヒドロビオプテリンとの拮抗阻害である2)。したがって,もし生体内でカテコールアミンがTHをフィードバック阻害しているとすれば,テトラヒドロビオプテリンの濃度が低下すると,強く阻害するはずである。
ドーパミンヒドロキシラーゼ
著者: 小島幸一 , 永津俊治
ページ範囲:P.488 - P.489
ドーパミンヒドロキシラーゼ(ドーパミンβ水酸化酵素,DBH)は,ノルアドレナリン神経(中枢と末梢交感神経)や副腎髄質細胞のシナプス小胞やクロマフィン顆粒に局在し,ドーパミンの側鎖β炭素を水酸化してノルアドレナリンを生成する銅含有モノオキシゲナーゼである。本酵素の発見当時から,酵素阻害剤によってノルアドレナリンの生成を生体内で阻害して,本態性高血圧症の薬剤を開発しようという研究が続き,多数の阻害剤が報告されている1)。
歴史的にみて最初に研究された阻害剤は,基質類似体のベンジルオキシアミンやベンジルヒドラジンである2)。ついで,DBHが銅酵素であることが解明され,ジエチルジチオカルバミン酸3)のような銅のキレート剤が研究された。抗アルコール中毒剤のジスルフィラムは生体内でジエチルジチオカルバミン酸に還元されて,本酵素を阻害することがわかり4),当初考えられたアルデヒド脱水素酵素の阻害とともに,DBHの阻害が抗アルコール中毒作用の機構と考えられている。
ヒスチジンデカルボキシラーゼ
著者: 渡邉建彦
ページ範囲:P.490 - P.491
ヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC,L-histidine carboxylyase,E. C. 4.1.1.28)は,ヒスタミン産生の唯一の酵素であるので,古くから多くの阻害剤が開発されてきた。可逆的なものとしてα-メチルヒスチジン,ブロクレシン,3-ヒドロキシ4-ニトロベンジルオキシアミン,不可逆的なものとしてα-ヒドラジノヒスチジン,α-クロロメチルヒスチジン,α-トリフルオロメチルヒスチジン,(S)α-フルオロメチルヒスチジン(FMH)などがある。その多くのものは特異性に問題があり,最近のほとんどの研究では特異性,力価の高いFMHを使っているので,これについて詳しく述べ,ほかのものについては総説1,2)を参照してほしい。
プロテインキナーゼA
著者: 和田明彦
ページ範囲:P.492 - P.495
蛋白質の可逆的リン酸化/脱リン酸化は,遺伝子転写・翻訳,細胞内小胞輸送,酵素,イオンチャネル/受容体などを調節し,多彩な細胞機能を短期的,長期的に制御している。プロテインキナーゼ(PK)は,(1)セカンドメッセンジャーにより活性化されるセリン/スレオニン特異的PK,(2)受容体型チロシン特異的PK,(3)刺激因子非依存的に活性を示すセリン/スレオニン特異的PK,チロシン特異的PKに大別される。
[プロテインキナーゼA(PKA)の構造,活性化,および細胞内局在]
プロテインキナーゼC
著者: 森下茂
ページ範囲:P.496 - P.498
蛋白質リン酸化酵素プロテインキナーゼC(PKC)は,種々の細胞の生理機能に深く関わっている。これらの機能解明のためのPKC研究に,PKCの生理的かつ強力な阻害剤やPKC活性化物質が,簡便かつ有効な手段となっている。
酵素研究において,阻害剤は有効な手段であるが,その重要な条件として,目的とする酵素の特異的かつ強力な阻害物質であることが望まれる。PKCはcDNAの解析から,C末端側の触媒領域とN末端側の制御領域に分けられる。触媒領域は他のプロテインキナーゼと高い相同性を示し,ATP基質の結合部位を有し,特にATP結合部位は相同性が高いことが知られている。したがって,触媒領域に作用する阻害剤は他のプロテインキナーゼも阻害し,特異性が低いと考えられる。またATPと拮抗して阻害する物質は,ATPの濃度にも影響を受ける。その他,触媒領域には基質の結合部位も存在することが知られている。一方,制御領域はPKCに特異的で,Ca2+,リン脂質,DG/TPAの結合部位を有する。制御領域はPKCに特異的な領域であるため,この領域に作用する阻害剤は,特異性の面で優れていると考えられる。しかし,触媒領域に作用するものの,特異性が高い阻害剤もある一方,制御領域に作用するものの,阻害活性の弱いものもあり,実験系に使用するためには,工夫が必要となる。
ホスホジエステラーゼ
著者: 浅沼幹人
ページ範囲:P.499 - P.501
Phosphodiesterase(PDE:3',5'-cyclic nucleotide phosphodiesterase)は,cAMPあるいはcGMPを5'-AMP,5'-GMPに加水分解する酵素である。従って,PDEに対する阻害剤はcAMPあるいはcGMPの濃度を高める。PDEは調節因子や基質選択性により現在では八つのファミリー,遺伝子配列の違いにより15のサブクラスに,さらにスプライシングの違いや局在により総計30以上のアイソザイムに細分されている1-3)。
PDE 1(Ca/calmodulin(CaM)-dependent)はCa/CaMにより活性化され,cAMP,cGMPの両者を基質として分解する細胞質分画酵素で,PDE 1A2,1A3,1B1,1C1,1C2,1C3,1C5のアイソザイムが脳に局在している。1A2は大脳皮質,海馬に多く4),cAMPで活性化されたAキナーゼによりリン酸化され,さらにcAMPを増加させる。1B1の局在はドーパミン(DA)D1レセプターと酷似しており,D1レセプターを介したcAMP二次伝達系に対するCa/CaMによる制御に関与しており4),CaMキナーゼⅡによりリン酸化され阻害される。1C2は嗅神経に限局し,嗅刺激後のcAMP,cGMPの増加を一過性にする。
ホスホリパーゼC
著者: 西田朗 , 山脇成人
ページ範囲:P.502 - P.504
イノシトールリン脂質特異的ホスホリパーゼC(PLC)は,細胞膜のリン脂質のひとつであるホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)を分解して,細胞内二次メッセンジャーであるジアシルグリセロールとイノシトール三リン酸を産生し,それぞれプロテインキナーゼC活性化と細胞内カルシウム放出を引き起こして細胞内へ情報伝達を行う1,2)。さらに最近では,PIP2自体が膜蛋白質の機能や膜接着性の調整を行っていることが明らかになり,この機能もPLCがPIP2を分解することで修飾するためにPLCの新知見の役割として注目されてきている。
PLCアイソザイムはβ,γ,δ型の3ファミリーに大別されている(図1)。3型とも高い(40-60%)アミノ酸配列相同性のあるX,Y領域を持つ。N末端側にpleckstrin homology(PH)部位とEFハンド部位を持ち,Y領域のC末端側にC2部位がある。さらに,PLCγのみXとY領域の間にsrc homology(SH)部位(二つのSH 2と一つのSH 3)とSH部位を挟むPH部位が存在する。X,Y領域は触媒部位,PH部位はPIP2を介して膜結合する部位,EFハンドとC2部位はカルシウムによる活性調整部位と考えられている。SH部位はリン酸化チロシンに結合して活性化シグナルを伝達する。
モノアミンオキシダーゼ
著者: 江頭亨
ページ範囲:P.505 - P.506
モノアミンオキシダーゼ(MAO)はモノアミン類を酸化的に脱アミノする酵素として知られ,種々の動物の組織中に存在し,細胞内では主としてミトコンドリア外膜のリン脂質と強固に結合している。MAOの補酵素はFADで,脳内でのMAOは神経終末に多く存在することから,中枢神経系との関りが重要視されている。1968年以後,基質および阻害剤特異性の研究からMAOの複数性が論じられ,MAOにはA型MAOとB型MAOが存在し,最近ではそれぞれの分子量測定やクローニングもされている。それと同時に選択的な阻害剤の開発も進んだ。特に,acetylenic系のMAO阻害剤であるclorgyline,i-deprenyl,pargylineはいずれも最初はA型およびB型MAOの基質として作用し,生成中間体となり,これが補酵素FADに結合し酵素活性を失活させる。MAO阻害剤の阻害強度は,一般的にK1値やIC50値が用いられているが,これらの値はその測定条件で相違する。(1)使用する動物の種,臓器の種類や細胞内分画でA型およびB型MAOの含量が相違する。(2)A型〔5-HT,norepinephrine(NE)〕,B型〔β-phenylethylamine(β-PEA),benzylamine〕および両タイプ(tyramine,dopamine)のMAOの基質のうち,いずれを使用したか。
Ⅴ.その他
抗うつ薬
著者: 本橋伸高
ページ範囲:P.508 - P.511
抗精神病薬開発中に生まれた三環構造を有するimipramineと,結核治療中に気分が高揚することから偶然生まれたiproniazidが最初の抗うつ薬であり,前者はノルアドレナリンやセロトニンの再取り込み阻害作用を有すること,後者はモノアミンの分解酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO)の阻害作用を有することが判明した1)。従って,以後の抗うつ薬の開発はモノアミンの再取り込み阻害作用を有するものか,MAO阻害作用を有するものが中心になっている。抗うつ薬は様々な神経伝達物質受容体にも作用するが,それらは主として副作用と関係すると考えられている。ムスカリン性アセチルコリン受容体は抗コリン作用(霧視・口渇・洞性頻脈・便秘・尿閉など)と,ヒスタミンH1受容体は抗ヒスタミン作用(鎮静・眠気など)と,さらには,α1-アドレナリン受容体は交感神経遮断作用(起立性低血圧・鎮静など)とそれぞれ関係する1-4)。
抗てんかん薬
著者: 兼子直 , 岡田元宏
ページ範囲:P.512 - P.514
良性家族性新生児痙攣(BFNC)の責任遺伝子が,アセチルコリン受容体のニコチン性受容体α4サブユニット遺伝子近傍に存在するK+チャネル(KCNQ)であると最近報告され1,2),ノックアウトマウスを用いた実験から,K+チャネル(GIRK 2)遺伝子欠損が自発性痙攣発現に関与することから3),てんかんがイオンチャネル機能異常に起因するのではないかと推定される。一方,興奮性神経伝達物質glutamate(GLU)の再取り込み部位の遺伝子欠損が自発性痙攣発現に関与するとことも報告され3),興奮性神経伝達機構の機能亢進が痙攣発現に関与するいう従来の仮説を支持するものと考えられた。しかし,α-amino-3-hydroxy-5-methyl-isoxazole-4-propionate(AMPA)型GLU受容体遺伝子欠損が,逆に,自発痙攣を誘発し3),GLU系機能と痙攣発現に関する詳細はなお検討の余地がある。抑制性神経伝達物質γ-aminobutyric acid(GABA)の受容体,合成酵素の遺伝子欠損も自発性痙攣を生じさせ3),今後,分子生物学的に病態解明が進展しよう。1980年代後半から始まったGLU機能抑制,GABA機能増強を中心に,抗てんかん薬は開発されてきたが,今後は分子生物学的研究成果を踏まえた,K+チャネルなどのイオンチャネル機能を介した新たな抗てんかん薬の開発が注目される3)。
中枢神経系刺激薬
著者: 大森哲郎 , 小山司
ページ範囲:P.515 - P.517
中枢神経系刺激薬という言葉に厳密な定義はない。精神刺激薬(psychostimulant)は同義に用いられるが,これにも明確な定義はない。狭義には覚醒剤(methamphetamine,amphetamine)およびその類似薬物にほぼ限定して用いるが,コカインを含める場合もある。より広義には刺激性の向精神作用を有する薬物全般を指し示す。本項では広義にとり,覚醒剤およびその類似薬物に加え,コカイン,フェンサイクリジン,大麻,カフェインなどについても解説することとする。
これらの薬物の一部は,その覚醒作用や気分高揚作用を利用して精神疾患の治療薬として用いられている。しかし,程度と性質は異なるにせよ,いずれの薬物も依存状態を形成しやすい。また一部の薬物は,特に慢性使用した場合には,精神分裂病や躁うつ病と類似した症状を出現させる。
パーキンソン病治療薬
著者: 山本光利 , 小川紀雄
ページ範囲:P.518 - P.520
中枢神経疾患の治療薬の中で,パーキンソン病治療薬はもっとも理論的に成功している。病態や治療薬を考える上では,シナプス部における神経伝達物質と受容体の変化の把握が重要である。パーキンソン病の主病変は黒質―線条体のドーパミン(DA)ニューロンの変性脱落であるが,それ以外にも線条体での相対的なアセチルコリン(ACh)系の機能亢進,さらには,陳旧症例におけるdopamine-β-hydroxylase低下によるノルアドレナリン(NA)の低下など多彩な生化学的変化が知られている。以下に作用機序による治療薬の分類に従い概略を述べる。
本病の薬物療法はDA補充療法から始まり,神経保護薬,さらには神経修復薬をめざして研究が行われている。DAアゴニストは実験系では神経保護作用を示唆しているが,臨床では直接的な証明はいまだされていない1-3)。DAアゴニストは臨床的にはlevodopa使用量を削減できる薬剤として,また,levodopaに伴う問題点の克服するための薬物と現実には理解してよい。本病は基本的には徐々に進行していく。このためDAの補充療法のみでは十分な薬効が得られがたくなる。こうした観点から,本病の薬物療法はできるだけ効果をあげ副作用を少なくするために,作用機序の異なった薬物の「低用量・多剤併用」が基本である。本稿では開発段階にあるパーキンソン病治療薬についても概略を述べる。
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61巻3号(2010年6月発行)
特集 SNARE複合体-膜融合の機構
61巻2号(2010年4月発行)
特集 糖鎖のかかわる病気:発症機構,診断,治療に向けて
61巻1号(2010年2月発行)
特集 脳科学のモデル実験動物
60巻6号(2009年12月発行)
特集 ユビキチン化による生体機能の調節
60巻5号(2009年10月発行)
特集 伝達物質と受容体
60巻4号(2009年8月発行)
特集 睡眠と脳回路の可塑性
60巻3号(2009年6月発行)
特集 脳と糖脂質
60巻2号(2009年4月発行)
特集 感染症の現代的課題
60巻1号(2009年2月発行)
特集 遺伝子-脳回路-行動
59巻6号(2008年12月発行)
特集 mTORをめぐるシグナルタンパク
59巻5号(2008年10月発行)
特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
59巻4号(2008年8月発行)
特集 免疫学の最近の動向
59巻3号(2008年6月発行)
特集 アディポゲネシス
59巻2号(2008年4月発行)
特集 細胞外基質-研究の新たな展開
59巻1号(2008年2月発行)
特集 コンピュータと脳
58巻6号(2007年12月発行)
特集 グリケーション(糖化)
58巻5号(2007年10月発行)
特集 タンパク質間相互作用
58巻4号(2007年8月発行)
特集 嗅覚受容の分子メカニズム
58巻3号(2007年6月発行)
特集 骨の形成と破壊
58巻2号(2007年4月発行)
特集 シナプス後部構造の形成・機構と制御
58巻1号(2007年2月発行)
特集 意識―脳科学からのアプローチ
57巻6号(2006年12月発行)
特集 血管壁
57巻5号(2006年10月発行)
特集 生物進化の分子マップ
57巻4号(2006年8月発行)
特集 脳科学が求める先端技術
57巻3号(2006年6月発行)
特集 ミエリン化の機構とその異常
57巻2号(2006年4月発行)
特集 膜リサイクリング
57巻1号(2006年2月発行)
特集 こころと脳:とらえがたいものを科学する
56巻6号(2005年12月発行)
特集 構造生物学の現在と今後の展開
56巻5号(2005年10月発行)
特集 タンパク・遺伝子からみた分子病―新しく解明されたメカニズム
56巻4号(2005年8月発行)
特集 脳の遺伝子―どこでどのように働いているのか
56巻3号(2005年6月発行)
特集 Naチャネル
56巻2号(2005年4月発行)
特集 味覚のメカニズムに迫る
56巻1号(2005年2月発行)
特集 情動―喜びと恐れの脳の仕組み
55巻6号(2004年12月発行)
特集 脳の深部を探る
55巻5号(2004年10月発行)
特集 生命科学のNew Key Word
55巻4号(2004年8月発行)
特集 心筋研究の最前線
55巻3号(2004年6月発行)
特集 分子進化学の現在
55巻2号(2004年4月発行)
特集 アダプタータンパク
55巻1号(2004年2月発行)
特集 ニューロンと脳
54巻6号(2003年12月発行)
特集 オートファジー
54巻5号(2003年10月発行)
特集 創薬ゲノミクス・創薬プロテオミクス・創薬インフォマティクス
54巻4号(2003年8月発行)
特集 ラフトと細胞機能
54巻3号(2003年6月発行)
特集 クロマチン
54巻2号(2003年4月発行)
特集 樹状突起
54巻1号(2003年2月発行)
53巻6号(2002年12月発行)
特集 ゲノム全解読とポストゲノムの問題点
53巻5号(2002年10月発行)
特集 加齢の克服―21世紀の課題
53巻4号(2002年8月発行)
特集 一価イオンチャネル
53巻3号(2002年6月発行)
特集 細胞質分裂
53巻2号(2002年4月発行)
特集 RNA
53巻1号(2002年2月発行)
連続座談会 脳とこころ―21世紀の課題
52巻6号(2001年12月発行)
特集 血液脳関門研究の最近の進歩
52巻5号(2001年10月発行)
特集 モチーフ・ドメインリスト
52巻4号(2001年8月発行)
特集 骨格筋研究の新展開
52巻3号(2001年6月発行)
特集 脳の発達に関与する分子機構
52巻2号(2001年4月発行)
特集 情報伝達物質としてのATP
52巻1号(2001年2月発行)
連続座談会 脳を育む
51巻6号(2000年12月発行)
特集 機械的刺激受容の分子機構と細胞応答
51巻5号(2000年10月発行)
特集 ノックアウトマウスリスト
51巻4号(2000年8月発行)
特集 臓器(組織)とアポトーシス
51巻3号(2000年6月発行)
特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
51巻2号(2000年4月発行)
特集 細胞極性の形成機序
51巻1号(2000年2月発行)
特集 脳を守る21世紀生命科学の展望
50巻6号(1999年12月発行)
特集 細胞内輸送
50巻5号(1999年10月発行)
特集 病気の分子細胞生物学
50巻4号(1999年8月発行)
特集 トランスポーターの構造と機能協関
50巻3号(1999年6月発行)
特集 時間生物学の新たな展開
50巻2号(1999年4月発行)
特集 リソソーム:最近の研究
50巻1号(1999年2月発行)
連続座談会 脳を守る
49巻6号(1998年12月発行)
特集 発生・分化とホメオボックス遺伝子
49巻5号(1998年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
49巻4号(1998年8月発行)
特集 プロテインキナーゼCの多様な機能
49巻3号(1998年6月発行)
特集 幹細胞研究の新展開
49巻2号(1998年4月発行)
特集 血管―新しい観点から
49巻1号(1998年2月発行)
特集 言語の脳科学
48巻6号(1997年12月発行)
特集 軸索誘導
48巻5号(1997年10月発行)
特集 受容体1997
48巻4号(1997年8月発行)
特集 マトリックス生物学の最前線
48巻3号(1997年6月発行)
特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
48巻2号(1997年4月発行)
特集 最近のMAPキナーゼ系
48巻1号(1997年2月発行)
特集 21世紀の脳科学
47巻6号(1996年12月発行)
特集 老化
47巻5号(1996年10月発行)
特集 器官―その新しい視点
47巻4号(1996年8月発行)
特集 エンドサイトーシス
47巻3号(1996年6月発行)
特集 細胞分化
47巻2号(1996年4月発行)
特集 カルシウム動態と細胞機能
47巻1号(1996年2月発行)
特集 神経科学の最前線
46巻6号(1995年12月発行)
特集 病態を変えたよく効く医薬
46巻5号(1995年10月発行)
特集 遺伝子・タンパク質のファミリー・スーパーファミリー
46巻4号(1995年8月発行)
特集 ストレス蛋白質
46巻3号(1995年6月発行)
特集 ライソゾーム
46巻2号(1995年4月発行)
特集 プロテインホスファターゼ―最近の進歩
46巻1号(1995年2月発行)
特集 神経科学の謎
45巻6号(1994年12月発行)
特集 ミトコンドリア
45巻5号(1994年10月発行)
特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
45巻4号(1994年8月発行)
特集 造血の機構
45巻3号(1994年6月発行)
特集 染色体
45巻2号(1994年4月発行)
特集 脳と分子生物学
45巻1号(1994年2月発行)
特集 グルコーストランスポーター
44巻6号(1993年12月発行)
特集 滑面小胞体をめぐる諸問題
44巻5号(1993年10月発行)
特集 現代医学・生物学の仮説・学説
44巻4号(1993年8月発行)
特集 細胞接着
44巻3号(1993年6月発行)
特集 カルシウムイオンを介した調節機構の新しい問題点
44巻2号(1993年4月発行)
特集 蛋白質の細胞内転送とその異常
44巻1号(1993年2月発行)
座談会 脳と遺伝子
43巻6号(1992年12月発行)
特集 成長因子受容体/最近の進歩
43巻5号(1992年10月発行)
特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
43巻4号(1992年8月発行)
特集 細胞機能とリン酸化
43巻3号(1992年6月発行)
特集 血管新生
43巻2号(1992年4月発行)
特集 大脳皮質発達の化学的側面
43巻1号(1992年2月発行)
特集 意識と脳
42巻6号(1991年12月発行)
特集 細胞活動の日周リズム
42巻5号(1991年10月発行)
特集 神経系に作用する薬物マニュアル
42巻4号(1991年8月発行)
特集 開口分泌の細胞内過程
42巻3号(1991年6月発行)
特集 ペルオキシソーム/最近の進歩
42巻2号(1991年4月発行)
特集 脳の移植と再生
42巻1号(1991年2月発行)
特集 脳と免疫
41巻6号(1990年12月発行)
特集 注目の実験モデル動物
41巻5号(1990年10月発行)
特集 LTPとLTD:その分子機構
41巻4号(1990年8月発行)
特集 New proteins
41巻3号(1990年6月発行)
特集 シナプスの形成と動態
41巻2号(1990年4月発行)
特集 細胞接着
41巻1号(1990年2月発行)
特集 発がんのメカニズム/最近の知見
40巻6号(1989年12月発行)
特集 ギャップ結合
40巻5号(1989年10月発行)
特集 核内蛋白質
40巻4号(1989年8月発行)
特集 研究室で役に立つ新しい試薬
40巻3号(1989年6月発行)
特集 細胞骨格異常
40巻2号(1989年4月発行)
特集 大脳/神経科学からのアプローチ
40巻1号(1989年2月発行)
特集 分子進化
39巻6号(1988年12月発行)
特集 細胞内における蛋白質局在化機構
39巻5号(1988年10月発行)
特集 細胞測定法マニュアル
39巻4号(1988年8月発行)
特集 細胞外マトリックス
39巻3号(1988年6月発行)
特集 肺の微細構造と機能
39巻2号(1988年4月発行)
特集 生体運動の分子機構/研究の発展
39巻1号(1988年2月発行)
特集 遺伝子疾患解析の発展
38巻6号(1987年12月発行)
-チャンネルの最近の動向
38巻5号(1987年10月発行)
特集 細胞生物学における免疫実験マニュアル
38巻4号(1987年8月発行)
特集 視覚初期過程の分子機構
38巻3号(1987年6月発行)
特集 人間の脳
38巻2号(1987年4月発行)
特集 体液カルシウムのホメオスタシス
38巻1号(1987年2月発行)
特集 医学におけるブレイクスルー/基礎研究からの挑戦
37巻6号(1986年12月発行)
特集 神経活性物質受容体と情報伝達
37巻5号(1986年10月発行)
特集 中間径フィラメント
37巻4号(1986年8月発行)
特集 細胞生物学実験マニュアル
37巻3号(1986年6月発行)
特集 脳の化学的トポグラフィー
37巻2号(1986年4月発行)
特集 血小板凝集
37巻1号(1986年2月発行)
特集 脳のモデル
36巻6号(1985年12月発行)
特集 脂肪組織
36巻5号(1985年10月発行)
特集 細胞分裂をめぐって
36巻4号(1985年8月発行)
特集 神経科学実験マニュアル
36巻3号(1985年6月発行)
特集 血管内皮細胞と微小循環
36巻2号(1985年4月発行)
特集 肝細胞と胆汁酸分泌
36巻1号(1985年2月発行)
特集 Transmembrane Control
35巻6号(1984年12月発行)
特集 細胞毒マニュアル—実験に用いられる細胞毒の知識
35巻5号(1984年10月発行)
特集 中枢神経系の再構築
35巻4号(1984年8月発行)
特集 ゲノムの構造
35巻3号(1984年6月発行)
特集 神経科学の仮説
35巻2号(1984年4月発行)
特集 哺乳類の初期発生
35巻1号(1984年2月発行)
特集 細胞生物学の現状と展望
34巻6号(1983年12月発行)
特集 蛋白質の代謝回転
34巻5号(1983年10月発行)
特集 受容・応答の膜分子論
34巻4号(1983年8月発行)
特集 コンピュータによる生物現象の再構成
34巻3号(1983年6月発行)
特集 細胞の極性
34巻2号(1983年4月発行)
特集 モノアミン系
34巻1号(1983年2月発行)
特集 腸管の吸収機構
33巻6号(1982年12月発行)
特集 低栄養と生体機能
33巻5号(1982年10月発行)
特集 成長因子
33巻4号(1982年8月発行)
特集 リン酸化
33巻3号(1982年6月発行)
特集 神経発生の基礎
33巻2号(1982年4月発行)
特集 細胞の寿命と老化
33巻1号(1982年2月発行)
特集 細胞核
32巻6号(1981年12月発行)
特集 筋小胞体研究の進歩
32巻5号(1981年10月発行)
特集 ペプチド作働性シナプス
32巻4号(1981年8月発行)
特集 膜の転送
32巻3号(1981年6月発行)
特集 リポプロテイン
32巻2号(1981年4月発行)
特集 チャネルの概念と実体
32巻1号(1981年2月発行)
特集 細胞骨格
31巻6号(1980年12月発行)
特集 大脳の機能局在
31巻5号(1980年10月発行)
特集 カルシウムイオン受容タンパク
31巻4号(1980年8月発行)
特集 化学浸透共役仮説
31巻3号(1980年6月発行)
特集 赤血球膜の分子構築
31巻2号(1980年4月発行)
特集 免疫系の情報識別
31巻1号(1980年2月発行)
特集 ゴルジ装置
30巻6号(1979年12月発行)
特集 細胞間コミニケーション
30巻5号(1979年10月発行)
特集 In vitro運動系
30巻4号(1979年8月発行)
輸送系の調節
30巻3号(1979年6月発行)
特集 網膜の構造と機能
30巻2号(1979年4月発行)
特集 神経伝達物質の同定
30巻1号(1979年2月発行)
特集 生物物理学の進歩—第6回国際生物物理学会議より
29巻6号(1978年12月発行)
特集 最近の神経科学から
29巻5号(1978年10月発行)
特集 下垂体:前葉
29巻4号(1978年8月発行)
特集 中枢のペプチド
29巻3号(1978年6月発行)
特集 心臓のリズム発生
29巻2号(1978年4月発行)
特集 腎機能
29巻1号(1978年2月発行)
特集 膜脂質の再検討
28巻6号(1977年12月発行)
特集 青斑核
28巻5号(1977年10月発行)
特集 小胞体
28巻4号(1977年8月発行)
特集 微小管の構造と機能
28巻3号(1977年6月発行)
特集 神経回路網と脳機能
28巻2号(1977年4月発行)
特集 生体の修復
28巻1号(1977年2月発行)
特集 生体の科学の現状と動向
27巻6号(1976年12月発行)
特集 松果体
27巻5号(1976年10月発行)
特集 遺伝マウス・ラット
27巻4号(1976年8月発行)
特集 形質発現における制御
27巻3号(1976年6月発行)
特集 生体と化学的環境
27巻2号(1976年4月発行)
特集 分泌腺
27巻1号(1976年2月発行)
特集 光受容
26巻6号(1975年12月発行)
特集 自律神経と平滑筋の再検討
26巻5号(1975年10月発行)
特集 脳のプログラミング
26巻4号(1975年8月発行)
特集 受精機構をめぐつて
26巻3号(1975年6月発行)
特集 細胞表面と免疫
26巻2号(1975年4月発行)
特集 感覚有毛細胞
26巻1号(1975年2月発行)
特集 体内のセンサー
25巻5号(1974年12月発行)
特集 生体膜—その基本的課題
25巻4号(1974年8月発行)
特集 伝達物質と受容物質
25巻3号(1974年6月発行)
特集 脳の高次機能へのアプローチ
25巻2号(1974年4月発行)
特集 筋細胞の分化
25巻1号(1974年2月発行)
特集 生体の科学 展望と夢
24巻6号(1973年12月発行)
24巻5号(1973年10月発行)
24巻4号(1973年8月発行)
24巻3号(1973年6月発行)
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24巻1号(1973年2月発行)
23巻6号(1972年12月発行)
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23巻4号(1972年8月発行)
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22巻6号(1971年12月発行)
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21巻7号(1970年12月発行)
21巻6号(1970年10月発行)
21巻4号(1970年8月発行)
特集 代謝と機能
21巻5号(1970年8月発行)
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20巻6号(1969年12月発行)
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19巻6号(1968年12月発行)
19巻5号(1968年10月発行)
19巻4号(1968年8月発行)
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19巻2号(1968年4月発行)
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18巻6号(1967年12月発行)
18巻5号(1967年10月発行)
18巻4号(1967年8月発行)
18巻3号(1967年6月発行)
18巻2号(1967年4月発行)
18巻1号(1967年2月発行)
17巻6号(1966年12月発行)
17巻5号(1966年10月発行)
17巻4号(1966年8月発行)
17巻3号(1966年6月発行)
17巻2号(1966年4月発行)
17巻1号(1966年2月発行)
16巻6号(1965年12月発行)
16巻5号(1965年10月発行)
16巻4号(1965年8月発行)
16巻3号(1965年6月発行)
16巻2号(1965年4月発行)
16巻1号(1965年2月発行)
15巻6号(1964年12月発行)
特集 生体膜その3
15巻5号(1964年10月発行)
特集 生体膜その2
15巻4号(1964年8月発行)
特集 生体膜その1
15巻3号(1964年6月発行)
特集 第13回日本生理科学連合シンポジウム
15巻2号(1964年4月発行)
15巻1号(1964年2月発行)
14巻6号(1963年12月発行)
特集 興奮收縮伝関
14巻5号(1963年10月発行)
14巻4号(1963年8月発行)
14巻3号(1963年6月発行)
14巻1号(1963年2月発行)
特集 第9回中枢神経系の生理学シンポジウム
14巻2号(1963年2月発行)
13巻6号(1962年12月発行)
13巻5号(1962年10月発行)
特集 生物々理—生理学生物々理若手グループ第1回ミーティングから
13巻4号(1962年8月発行)
13巻3号(1962年6月発行)
13巻2号(1962年4月発行)
Symposium on Permeability of Biological Membranes
13巻1号(1962年2月発行)
12巻6号(1961年12月発行)
12巻5号(1961年10月発行)
12巻4号(1961年8月発行)
12巻3号(1961年6月発行)
12巻2号(1961年4月発行)
12巻1号(1961年2月発行)
11巻6号(1960年12月発行)
Symposium On Active Transport
11巻5号(1960年10月発行)
11巻4号(1960年8月発行)
11巻3号(1960年6月発行)
11巻2号(1960年4月発行)
11巻1号(1960年2月発行)
10巻6号(1959年12月発行)
10巻5号(1959年10月発行)
10巻4号(1959年8月発行)
10巻3号(1959年6月発行)
10巻2号(1959年4月発行)
10巻1号(1959年2月発行)
8巻6号(1957年12月発行)
8巻5号(1957年10月発行)
特集 酵素と生物
8巻4号(1957年8月発行)
8巻3号(1957年6月発行)
8巻2号(1957年4月発行)
8巻1号(1957年2月発行)