特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物 1.イオノトロピック受容体 1)陽イオンチャネル内蔵型
AMPA受容体・カイニン酸受容体
著者:
坪川宏1
所属機関:
1自治医科大学生理学第一講座
ページ範囲:P.322 - P.325
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AMPA受容体・カイニン酸受容体はイオンチャネル内蔵型グルタミン酸受容体のサブタイプで,もう一つのサブタイプであるNMDA型に対してnon-NMDA型と総称されることがある。アゴニストとの結合によりチャネルが開き,陽イオンが透過する。グルタミン酸によるシナプス伝達時には,通常これらの受容体チャネル電流に起因する興奮性シナプス後電位(EPSP)がみられる。遺伝子クローニングにより両受容体を構成するサブユニットのcDNAが単離され,AMPA受容体のサブユニットとしてGluR1-4が,カイニン酸受容体のサブユニットとしてGluR5-7,KA1,KA2が報告された。受容体はこれらのサブユニットのヘテロマーとして機能し,組み合わせによってチャネルを透過できるイオンの種類が異なる場合がある。すなわちGluR2を持つAMPA受容体にはカルシウム透過性がないが,GluR1,3,4のみで構成された受容体はカルシウムを透過させる。
古くはAMPA受容体・カイニン酸受容体をそれぞれ選択的に刺激・抑制できる薬物がなかったため,哺乳動物の中枢神経系においては両者の異同が問題にされてきた。現在では,グルタミン酸以外の物質に対する結合能などを指標に比較的受容体特異的なアゴニスト・アンタゴニストが合成されている。