特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物 2.Gタンパク共役型 3)エイコサノイド受容体
カンナビノイド受容体
著者:
杉浦隆之1
和久敬蔵1
所属機関:
1帝京大学薬学部衛生化学教室
ページ範囲:P.407 - P.409
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カンナビノイドとはマリファナの活性成分である⊿9-テトラヒドロカンナビノール(⊿9-THC)を中心とする一連の化合物の総称である。カンナビノイドに対する受容体が脳に存在していることは,構造活性相関の実験結果などから以前より予想はされていたが,⊿9-THCやそのアナログの場合,非特異的結合が非常に大きく,結合実験を行っても特異的結合を検出することはなかなか困難であった。最終的な証明は非特異的結合が小さく,強力な活性を有する合成カンナビノイド,[3H]CP 55940を使うことによりなされた。そして,1990年にはアメリカのグループによって,ラットの脳cDNAライブラリーからクローニングされていた7回膜貫通,Gタンパク質共役型のオーファン受容体の遺伝子が,実はカンナビノイド受容体の遺伝子であることが明らかにされた1)。現在ではこの受容体はカンナビノイドCB 1受容体と呼ばれており,脳をはじめ精巣,子宮,肺など様々な臓器に広く存在していることがわかっている。脳では黒質,淡蒼球,海馬,小脳の分子層などで特に多量に発現している。CB 1受容体はラットでは473個,ヒトでは472個のアミノ酸からなっている。ついで,1993年には脾臓に多量に発現しているカンナビノイド受容体の遺伝子としてCB 2受容体の遺伝子がクローニングされた。