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特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998 Ⅲ.トランスミッターの放出・取り込みに作用する薬物
サブスタンスP
著者: 鈴木秀典1
所属機関: 1日本医科大学薬理学教室
ページ範囲:P.454 - P.456
文献購入ページに移動 substance P(SP)は哺乳類においてneuro-kinin A(NKA)およびneurokinin B(NKB)と共にタキキニンtachykininsと呼ばれる一群の神経ペプチドに属し,11個のアミノ酸からなる。SPとNKAは共通のpreprotachykinin A(PPT-A)遺伝子に由来し,RNAスプライシングによってできる3種類のmRNAを介して生成される1)。SPは生体に広く分布し,特に脊髄後角,中脳黒質などに多く存在する2)。SPの神経伝達物質としての作用は脊髄においてよく調べられている。すなわち,SPは脊髄後角に終止する一次求心性線維の一部,主に無髄のC線維中に含まれ,刺激によって神経終末から放出され,脊髄後角ニューロンに時間経過の遅い興奮性シナプス後電位(slow EPSP)を引き起こす2)。C線維は痛みを伝える神経線維であるので,SPは痛覚伝達に関わる伝達物質と考えられる。SPをコードするPPT-A遺伝子をノックアウトすると,急性の痛覚刺激(熱および機械的刺激)に対する反応は変化しないが,強度の痛覚受容や痛覚過敏状態における反応が減弱する3)。また,SPに高い親和性を持つNK1受容体遺伝子をノックアウトしても,C線維の反復刺激によって引き起こされるC線維応答の増強現象(wind up)がみられなくなる4)。すなわち,SPは強い痛みの伝達や痛覚過敏の維持に特に関与する可能性がある。
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