特集 発生・分化とホメオボックス遺伝子
四肢形成におけるホメオボックス遺伝子
著者:
和田直之1
野地澄晴2
濃野勉1
所属機関:
1川崎医科大学分子生物学教室
2徳島大学工学部生物工学科
ページ範囲:P.588 - P.593
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四肢原基の肢芽において,ホメオボックス遺伝子産物の分布が最初に報告されたのは1988年であるから,今からちょうど10年前のことになる1)。その1年後,クラスターを構成するホメオボックス遺伝子群(Hox遺伝子群)のひとつ,HoxD遺伝子群(当時はHox5とよばれていた)が,肢芽の前後軸形成にかかわる極性化活性帯(zone of polarizing activity(ZPA);後述)を中心に入れ子状に発現するという発表がなされ2),肢芽研究者に大きな衝撃を与えた。それから今日までHox遺伝子を中心とするホメオボックス遺伝子は,四肢パターン形成機構解明の鍵となる分子として常に注目されてきた。これらの遺伝子は,発見当初から肢芽内の領域特異性を議論するための「マーカー」として用いられる側面が多かったが,最近はマウス胚やニワトリ胚での遺伝子操作が比較的容易になったこともあり,個々の遺伝子の持つ役割,あるいは遺伝子間の相互作用についての議論も盛んである。ここでは,肢芽形成とその後のパターン形成過程でのホメオボックス遺伝子(主にHox遺伝子)の関与について,比較的最近の知見をまとめる。なお,ほかの総説も併せて参照いただきたい3-6)。