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実験講座
ツーフォトンマイクロスコピーの原理と実際
著者: 久場健司1
所属機関: 1名古屋大学医学部第一生理学講座
ページ範囲:P.602 - P.611
文献購入ページに移動 生きた細胞や組織の三次元構造や生体機能分子やイオンの局在と動的変化は,共焦点レーザー走査顕微鏡(Confocal Laser-Scanning Microscope:CLSM)を使って,細胞や組織の切片像を記録することにより知ることができる。CLSMでは,レーザーなどの点光源で資料を照射し,焦点面から出た光のみをピンホールを通して測光し,点の情報を二次元の像として再現することにより切片像を得る1-3)。しかしながら,CLSMにはいくつかの問題がある。紫外励起の蛍光プローブの場合には,顕微鏡光学系が最近かなり改善されたとはいえ,その結像特性が可視光に比べるとかなり劣り,紫外光は細胞毒性が高い。また,蛍光物質の励起はレーザーの透過するすべての組織で起こるので,蛍光物質の退色も速い(図1左)。さらに,組織の深い部位では,レーザー光および蛍光の散乱のために,ピンホールを通しての共焦点測光ができなくなる。この問題を一挙に解決するのが,二(多)光子励起による蛍光を測定するレーザー顕微鏡(Two(Multi)-Photon Laser-Scanning Microscope:TP-LSM(MP-LSM))である4-11)。高出力の超短パルスレーザーを対物レンズで絞り込み,蛍光物質を照射すると,非常に短時間の間に一つの蛍光分子に二つ(複数)の光子が入り,二(複数の)光子のエネルギーの和で蛍光物質が励起される(図1右)。
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