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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学5巻1号

1953年08月発行

雑誌目次

巻頭

國際生理學會に因んで

著者: 杉靖三郎

ページ範囲:P.1 - P.1

 8月の末から9月にかけて,カナダのモントリオールで,"國際生理學會"がひらかれる。わが國からも,名大 久野,東北 本川,東大 小林の各教授をはじめ,在米の數氏が參加する。
 この學會は,生理學,生化學および藥理學を包括した國際學會で,第1回は1889年に開かれた。これより先,およそ20年,1867年にはじめて國際醫學會が成立し,生理學もその一分科會として存在していたが,交遊歡待の行事が多く,學術上に稗益するところが少なかつたのでこれにあきたらず,醫學の基礎的研究をする學者らが,相携えて,その學術の發展のために,獨立した國際生理學會をつくつたのであつた。

綜説

Glyoxylate-Oxaloacetate系を中心とする代謝型式についての考察

著者: 笹川泰治

ページ範囲:P.2 - P.14

 この論文は,2・3の一般的な代謝の問題についての考察と,結核菌の代謝に關する實驗結果とに基いて,醋酸を中心とするTCA-サイクルと同樣にグリオキシル酸を中心とする,cyclicな分解型式が存在しうることを論じたものである。
 以下次の順に從つて考察をすゝめて行くことにする。

論述

正常呼吸中樞及びその延髓脊髓内遠心傳導路の活動電位

著者: 福原武 ,   中山沃 ,   岡田博匡

ページ範囲:P.15 - P.20

 Ⅰ.緒言
 1936年Gesell等3)は延髄から脊髄に亘つて,呼吸に關係すると考えられる求心路,遠心路から吸息相並びに呼息相に一致して現われるスパイク放電を記録し,延髄の閂附近の網樣體では,殊に著明なスパイク放電が認められることから,ここに呼吸中枢が存在し,その中に吸息性及び呼息性ノイロンが混在すると考えた。しかるに1951年Gesell等の研究を追試したDirken及びWoldring2)8)は中枢の存在部位についてはGesell等の見解にほぼ一致するが,吸息性及び呼息性ノイロン群は網樣體中にそれぞれ分離して局在し,前者は腹側方に,後者はそれの背側に位するという。また同年Amoroso等1)は吸息性及び呼息性ノイロンはGesell等の結果に等しく混在するが,内網樣體の腹側方では吸息性ノイロンが幾分多いように思われるという。
 正常呼吸中枢の所在については,私ども5)6)はこれまでの研究者とは大いに見解を異にしている。私どもはさきに腦幹の横斷實驗及び局所的電氣凝固實驗によつて正常呼吸中枢が聽條の高さにおいて兩側の外網樣體中に對をなして局在し,この中枢からの遠心路は延髄の外網樣體中を交叉することなく下降すると結論した。

微生物性發熱物質—その生體反應

著者: 横井泰生

ページ範囲:P.21 - P.26

 研究の端緒
 今世紀のはじめ頃から臨床醫學上靜脈内注射が實用化され,注射に伴う偶發的發熱を觀察する機會が増加して來た。この不可解な現象は,注射内容に從つて,夫々「サルバルナン熱」「食鹽熱」「糖熱」「蛋白熱」などと呼ばれた。體内における他イオンとの不均衡なナトリウム・イオン量の存在,これが食鹽熱の原因であるとし,また本來すべての糖類,すべての蛋白は發熱性を有するものであるとも主張された。他方,注射藥による發熱はすべて溶媒として用いた蒸溜水が惡いためであるとの説も起り,微量に混在する金屬イオンも問題となつた。このような情勢下にあつてWechselmann(1911)51)は,サルバルサン注射などに伴う惡寒戰慄などの不快現象を防ぐためには,新鮮な蒸溜水を用いればよいこと,HortとPenfold(1911)19)は蒸溜水の保存にさえ注意すればよいことに着目している。しかし注射藥發熱の原因をはつきりと微生物に結びつけて解釋したのはSeibert(1923〜25)38)である。彼女は,水中にごく普通に存在する數種の雑菌をとらえ,これら細菌の發育増殖により蒸溜水が強い熱性を帯びることを實證し,食鹽水やサルバルサン注射時の發熱の原因はこれで明白になつたと主張した(水熱説)。

鎭痛藥の作用點

著者: 藤田貞雄

ページ範囲:P.27 - P.32

 鎮痛藥は脊髄の後根あるいは腦神經から中枢に入る知覺性の衝撃をその求心路の何處かで遮斷して大脳皮質まで到達させない樣にする藥物であることは定義出來ない。痛覺は一部は中腦と間腦で,又一部は大脳皮質で形成されるという(Wolff1))が,痛覺を生ぜさせると思われる刺激を加えた時,その求心性の衝撃がこれらの部位に達し,而もその部位の機能が正常であつても常に痛覺が生じるとは限らない事は,Bishop2)が云つているように痛覺を起す刺激閾値は,注意力とか意識とかという精神状態によつて,痛覺に對するperceptionそのものが非常に異るので一定しないからである。だから鎮痛藥の效果は痛覺の有無を答申する事が出來るヒトを實驗の對象にしても測定することは至難なことであるし,まして動物實驗では現在の所到底不可能なことである。こゝで述べる鎮痛藥の作用點とは,臨床的に鎮痛作用があるといわれている藥物について,動物に痛覺を起すと思われる刺激を加えた時,中枢神經にあらわれる反應を目標にして行つた實驗成績から單に推測したものであつて,この點が他の藥物と異り,藥物の效果自身が測定出來ないという實驗の根本的な缺陥によるあいまいさがある事は致し方がない。

報告

人體神經及び筋の電氣刺激閾値測定法—Balancing network法による

著者: 本間三郞

ページ範囲:P.33 - P.36

 神經及び筋の電氣刺激閾直は摘出標本にては簡單に,且つ色々の刺激要素をも求められる。人體神經及び筋にてはLapicque1)及びBurguignon2)以來臨床的に測定され,應用されてきたが,人體においでは刺激電流は經皮的に與えられるから標本實驗の方法をそのまゝ適用することはできない。Lapicque等もその點を考慮して人體測定を成したのであるけれども,皮膚の電氣的性質の詳細が判明したのはそれ以後のことで,現在ではその考慮のみでは充分でないのである。即ち増幅,記録装置の進歩によつて皮膚の容量成分の性質言いかれば皮膚電氣容量の値並びに誘導する電極の大小との關係等が明確化されたのであつて3),Lapicque等の抵抗成分のみでは充分意を盡さず,しかも容量成分をもとゝする電流變形の時間が神經の利用時に關係して閾値測定に際し大なる役割を果しておると考えられるからである。同樣な考えの下に最近和合4)によつて測定方法が考案され上述の難點が幾分なりとも緩和されたのであるが,複雑な,進んだ研究にはやはり不適當である。ともかく皮膚に左右される事なく神經及び筋の閾値が求められることが理想的である。皮膚というものは環境變化に敏感に反應し,從つて電氣的性質も變つてくるから尚更なのである。以下測定方法を説明しつゝその意とするところを合せ述べてゆくことにする。

發汗時尿中抗利尿性物質の檢出

著者: 伊藤眞次 ,   木村光博

ページ範囲:P.36 - P.37

 高温曝露によつて11以上の發汗があつた場合,尿中にADSが檢出せられる。程度ははるかに低いが,汗中にもADSが見出される。

等張性攣縮の力學

著者: 眞島英信 ,   田中宣子

ページ範囲:P.38 - P.42

 Fick1)以來骨骼筋收縮の力學的研究の主題は,收縮速度大なる程機械的仕事量及熱發生量,從つてエネルギー發生量が小さくなる現象の解明にあると思われる。Hill2)が粘性なる概念を導入してこの困難を一應排除したかに見えるが,其の後Levin & Wyman3),Fenn & Marsh4),Katz5)等によつて量的にも質的にも修正を施され,Hill6)自身それを認めて結局(F+a)v=b(Fo-F)を導いた。茲にFは張力,Foは等尺性強縮の張力,aは短縮熱,bは比例常數,vは短縮速度である。何れにしても粘性を問題にする限り速度が重要なパラメーターであり,速度一定の條件,換言すれば等張性の條件下に實驗を行うことが必要になる。即ち上式に於てF及びvは時間の函數ではなく收縮中一定の値をとる必要がある。
 そしてこの爲には攣縮ではいけないので必ず強縮の場合について實驗が行われている。この理由を考えるに當つていわゆる等張性攣縮なるものを分析してみると直ちに2つの疑點が見出される。

ビタミンB1の缺乏症判定法比較檢討

著者: 飛鳥田護 ,   廣瀨正義 ,   竹村長生 ,   中村弘

ページ範囲:P.42 - P.44

 脚氣はビタミンBl(以下B1と略す)の投與によつて急速に治癒輕快することから,その發病原因としてB1缺乏が最も重要視されている。臨床的にその症状が完備すれば診斷は容易であるが,最近はその典型的な症状を示すものが稀で,臨床症状の觀察のみでは確實に診斷することができない状況である8)。このためにB1の缺乏状態を判定する目的で次に述べるような各種の化學的な判定方法が考案されるに至つた。すなわち1)直接血中B1量の測定を行つて體内B1量を推定しようとする方法,2)尿中B1量を測定するとともに一定量のB1を負荷して,その排泄率を檢する方法9),3)B1缺乏によつて起る糖代謝障碍の状況を觀察して,間接にB1缺乏状況を推測する試み等である4),12),13)これらのうちで1)と2)の方法はB1定量が必要であり,その實施に特別な装置と熟練した技術を必要とするために一般的でないうらみがある。しかも體内B1保有量の多少と個體の示す障碍程度とは必ずしも平行しないといわれている。以上の理由から最近は3)の化學的判定法,すなわちB1缺乏時にみられる糖代謝の障碍状況を血液及び尿り化學的定量法から追求して,間接にB1缺乏状態を判定しようとする次のような試みがひろく行われるに至つた。

——

第2回神經化學班談話會記事

著者: 林髞 ,   岡本彰祐 ,   臺弘

ページ範囲:P.45 - P.49

 第2回神經化學班シンポジウムは,昭和27年11月9日,中座長の開會の挨拶及び四國九州分會の研究紹介があつた後,林,岡本,臺三氏の報告と,それに對する討論とが約6時間つゞけられた。この記録はその要約である。尚當日の報告は主として「神經系の機能とグルタミン酸代謝」を中心にして行なわれた。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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