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文献詳細

雑誌文献

生体の科学5巻1号

1953年08月発行

文献概要

論述

微生物性發熱物質—その生體反應

著者: 横井泰生1

所属機関: 1國立衛生試驗所

ページ範囲:P.21 - P.26

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 研究の端緒
 今世紀のはじめ頃から臨床醫學上靜脈内注射が實用化され,注射に伴う偶發的發熱を觀察する機會が増加して來た。この不可解な現象は,注射内容に從つて,夫々「サルバルナン熱」「食鹽熱」「糖熱」「蛋白熱」などと呼ばれた。體内における他イオンとの不均衡なナトリウム・イオン量の存在,これが食鹽熱の原因であるとし,また本來すべての糖類,すべての蛋白は發熱性を有するものであるとも主張された。他方,注射藥による發熱はすべて溶媒として用いた蒸溜水が惡いためであるとの説も起り,微量に混在する金屬イオンも問題となつた。このような情勢下にあつてWechselmann(1911)51)は,サルバルサン注射などに伴う惡寒戰慄などの不快現象を防ぐためには,新鮮な蒸溜水を用いればよいこと,HortとPenfold(1911)19)は蒸溜水の保存にさえ注意すればよいことに着目している。しかし注射藥發熱の原因をはつきりと微生物に結びつけて解釋したのはSeibert(1923〜25)38)である。彼女は,水中にごく普通に存在する數種の雑菌をとらえ,これら細菌の發育増殖により蒸溜水が強い熱性を帯びることを實證し,食鹽水やサルバルサン注射時の發熱の原因はこれで明白になつたと主張した(水熱説)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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