報告
ビタミンB1の缺乏症判定法比較檢討
著者:
飛鳥田護1
廣瀨正義1
竹村長生1
中村弘1
所属機関:
1東京慈恵會醫科大學生理學教室杉本研究室
ページ範囲:P.42 - P.44
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脚氣はビタミンBl(以下B1と略す)の投與によつて急速に治癒輕快することから,その發病原因としてB1缺乏が最も重要視されている。臨床的にその症状が完備すれば診斷は容易であるが,最近はその典型的な症状を示すものが稀で,臨床症状の觀察のみでは確實に診斷することができない状況である8)。このためにB1の缺乏状態を判定する目的で次に述べるような各種の化學的な判定方法が考案されるに至つた。すなわち1)直接血中B1量の測定を行つて體内B1量を推定しようとする方法,2)尿中B1量を測定するとともに一定量のB1を負荷して,その排泄率を檢する方法9),3)B1缺乏によつて起る糖代謝障碍の状況を觀察して,間接にB1缺乏状況を推測する試み等である4),12),13)これらのうちで1)と2)の方法はB1定量が必要であり,その實施に特別な装置と熟練した技術を必要とするために一般的でないうらみがある。しかも體内B1保有量の多少と個體の示す障碍程度とは必ずしも平行しないといわれている。以上の理由から最近は3)の化學的判定法,すなわちB1缺乏時にみられる糖代謝の障碍状況を血液及び尿り化學的定量法から追求して,間接にB1缺乏状態を判定しようとする次のような試みがひろく行われるに至つた。