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特集 時間生物学の新たな展開
日周リズムと視交叉上核のバイオケミストリー
著者: 井上愼一1
所属機関: 1山口大学理学部自然情報科学科
ページ範囲:P.193 - P.199
文献購入ページに移動 生物は精緻な化学反応システムであると一面では見なすことができる。そのような化学反応の中には,1日のうちで昼間と夜で反応速度が変化しているものが少なくない。あるいは,ほとんどすべて生体内の化学反応は1日の時刻に依って変化しているといえるかもしれない。たとえば,生化学反応の最終的な結果である体温は活動期には増加し,睡眠時には低下する。生体内エネルギー代謝の指標である呼吸や心拍も同様に活動期に高まり,休息期に減少することから,明らかな日周変動を示す。これらは生体の生化学反応の一般的なレベルを反映しているものと考えられるから,動物個体のバイオケミストリーには1日の時刻による変化,すなわち日周リズムがあるといえる。しかし,通常一つの生化学反応はほかの多くの要素によって制御されていて,その反応に日周リズムがあるからといって,それが生物時計に駆動されている内因的なリズムであるかどうかは定かでない1)。
たとえば多くの生化学反応は体の外からの栄養補給に依存していて,ヒトが昼間食事をすればそれに依存する生化学反応が昼間高まるのは当然である。また,ヒトは昼間に運動してエネルギーを消費するのであるから,糖を分解する反応が昼間高まるのはその結果であるといえる。一定の環境条件の下で体温リズムも自由継続する。従って,内因性のリズムの定義に合致する。
たとえば多くの生化学反応は体の外からの栄養補給に依存していて,ヒトが昼間食事をすればそれに依存する生化学反応が昼間高まるのは当然である。また,ヒトは昼間に運動してエネルギーを消費するのであるから,糖を分解する反応が昼間高まるのはその結果であるといえる。一定の環境条件の下で体温リズムも自由継続する。従って,内因性のリズムの定義に合致する。
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