話題
血圧からみたヒトの生物時間:体内ゼロ時
著者:
田村康二1
井尻裕1
河埜功1
殷東風1
所属機関:
1山梨医科大学第二内科
ページ範囲:P.252 - P.254
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高血圧の診断と治療に当たっては,血圧の生物時間構造を評価することが必要となってきた1-5)。臨床的には携帯型自動血圧計が広く用いられるようになってから,生物時計を考えて高血圧の治療をしようということが広く一般化してきた。ところが,多くの携帯型自動血圧計に関する研究は,時間を機械的な時計に頼って評価してきている。米国の“Cardiac rhythm supression trial”によってまとめられた成績は,最初に機械時計の24時間を横軸にとってその1日での心筋梗塞の発生率を調べると,朝方に多いと報告して世界的な注目を浴びるに至った。さらに,横軸に目覚めた時間をゼロとして同じ成績を再評価してみたところ,最初の方法では明らかにすることができなかった目覚めてから2時間以内と,10~12時間後の二つの発生率の山があることがわかった2)。すなわち,機械的な時計の評価では,ヒトの生体リズムの評価は不十分だということが疫学的に証明された。
真夜中の12時をゼロとする機械的時計に頼ることは,1個人内並びに個人間の生活が様々であるヒトの生活の24時間の変動を評価するのには妥当ではない。つまり1日の生活の違う人達を同じように評価するためには,どうしても生物的学的なゼロ時間を設定しなければ妥当な評価ができないと考えるに至った。