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文献詳細

雑誌文献

生体の科学50巻4号

1999年08月発行

文献概要

特集 トランスポーターの構造と機能協関

薬物トランスポーター

著者: 齋藤秀之1 乾賢一1

所属機関: 1京都大学医学部附属病院薬剤部

ページ範囲:P.268 - P.273

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 生体の解毒能は,正常な生理機能や細胞活動を損なう侵入異物を速やかに体外排除することによつて,恒常性の維持と環境適応を確保するために獲得されてきた高度な生体防御システムとして理解される。このような異物排除機構は肝臓や腎臓などの代謝・排泄を担う主要臓器のほかに,小腸,血液脳関門,血液胎盤関門,血液精巣関門にも備わつていることが明らかにされている。これらの臓器または組織に発現する異物排除系は,臓器固有の解剖学的および生理的な環境特性を巧みに利用して効率的な異物排除を司つている場合(二次性能動輸送)と,ATPの加水分解エネルギーを消費して,細胞内異物や老廃物を汲み出している場合(一次性能動輸送)が知られている。当然のことながら生体内に投与された医薬品の多くは異物として認識されるため,その体内動態は代謝を含めた体外排除系ネットワークとの相互作用によつて制御されることとなる。現在までに,分子レベルで構造が明らかにされた薬物またはその代謝物の排泄に関わる膜輸送担体(薬物トランスポーター)は,一次性能動輸送系,二次性能動輸送系を含めて多様である(図1)。異物排除を担うトランスポーター群の遺伝子同定と構造解明が進展するにつれて,従来の機能解析結果を裏付ける知見と共に,これまで予想し得なかつた事実や先天性疾患との関連についても報告されつつある。
 本稿では,薬物トランスポーター研究の現状と展望について概説する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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