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文献詳細

雑誌文献

生体の科学50巻4号

1999年08月発行

文献概要

連載講座 個体の生と死・13

中枢神経系の発生―細胞増殖と3次元画像データベースについて

著者: 田中省二1

所属機関: 1三菱化学生命科学研究所

ページ範囲:P.315 - P.322

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 中枢神経系は生体中で高度に進化した機能を担い,約百億個,数百種の細胞から構成される主要な器官である。個体発生では,最も早く発生が始まるが,その完成は最も遅い。発生の主な過程を単純に3段階に分ける。
 1.原腸胚形成開始後,陥入する中胚葉から誘導を受けて,外胚葉は円柱状に伸長する細胞群からなる平板状の神経板になる(神経誘導)。その際,神経板の頭尾軸も形成される。
 2.神経板の正中線上に溝が形成され(神経溝),そこを底部にして辺縁部が隆起して管状構造となり,同時に隣接する外胚葉と分離して,中枢神経系としての脳・神経管ができる。脳・神経管は単層の細胞群からなり,前端部では胞状に著しく膨張し,前脳―中脳―後脳(原脳)ができる。さらに続く脳胞の膨張,屈曲によって部域化が進行し,成体の脳のパターン(端脳,間脳,中脳,後脳,髄脳)が完成する。
 3.神経上皮を構築する細胞群は多層化し始め,平均8細胞層が作られる。その過程では,細胞周期からの離脱と並行して細胞分化が始まり,細胞の移動,神経突起の成長,神経細胞間の結合が進行し,脳・神経管の階層構造が作られる。
 そうした中枢神経の発生過程を通じて細胞増殖が色々な形で深く関わっている。本稿の前半では,細胞増殖から見た中枢神経の発生に関連する一連の研究を紹介する。後半は,中枢神経の発生学を進めるために将来有効になると思われる3次元画像データベースについて,当研究室の仕事を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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