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特集 病気の分子細胞生物学 1.筋・神経・精神疾患
重症筋無力症
著者: 平井俊策1
所属機関: 1東京都立神経病院
ページ範囲:P.364 - P.365
文献購入ページに移動本症は神経筋接合部の後シナプス膜上にあるアセチルコリン受容体(AChR)を標的とする自己抗体の生成によって,骨格筋の易疲労性,筋力低下を基本症状とし,日内変動,寛解・増悪を繰り返す疾患である1-3)。特に眼瞼下垂,複視などの眼症状で初発しやすく,やがて全身の筋力低下,構語障害,嚥下障害さらには呼吸障害などを起こし,筋萎縮をきたすこともある。分類としてはOsserman分類がよく用いられる。有病率は人口10万人当たり約5人で,女性の方が2倍程度多く,女性では10歳以下と30-40歳代に,男性では10歳以下と40-50歳代に発症のピークが認められる。約80%の例に胸腺腫ないしリンパ濾胞増生などの何らかの胸腺異常を合併し,甲状腺の異常も20%前後の例に認められる。また患者の85%に抗AChR抗体が証明されるが,眼筋型では抗体が陰性のことも多い。神経筋難病の一つに指定されており,以前はクリーゼとよばれる呼吸筋麻痺による死亡が多く,文字通り「重症な」疾患であった。しかし呼吸管理の方法が進歩し,成因の解明が進み,抗コリンエステラーゼ薬のほかにステロイド薬その他の免疫抑制薬の使用,血液浄化療法,胸腺摘出術などの各種の治療法が発達したため,今日ではかなりの例が軽快や寛解を示し,コントロール可能な疾患となった。しかし,QOLの上では30%の患者が不満を訴えている。
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