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特集 病気の分子細胞生物学 1.筋・神経・精神疾患
家族性アミロイドポリニューロパチー
著者: 池田修一1
所属機関: 1信州大学医学部第三内科
ページ範囲:P.366 - P.368
文献購入ページに移動家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)は常染色体優性の遺伝性全身性アミロイドーシスの一型であり,多発神経炎と自律神経障害を主徴とする。20歳代後半から40歳代前半に発病することが多く,10年前後の経過でアミロイド沈着による多臓器不全のため死亡する。本疾患は臨床的には末梢神経症状が下肢遠位部から出現し,上肢へと上行性に広がるⅠ型,手根管症候群で発症して後に多発神経炎が加わるⅡ型,Ⅰ型類似の多発神経炎に早期から重度の腎障害を合併するⅢ型,ならびに脳神経障害が前景をなすⅣ型に分類される。発生機序からするとⅠ型とⅡ型のアミロイド前駆タンパクは血清タンパクの一種であるtransthyretin(TTRと略す,旧名prealbumin)であり,Ⅲ型はapolipoprotein AI(Apo AIと略す),Ⅳ型はgelsolin(Gelと略す)である。また,患者ではこれらの前駆タンパクをコードする遺伝子に1塩基変異がある。通常FAPといった場合はⅠ型FAPを指し,本疾患を引き起こすTTR遺伝子の変異は60数種類が知られている。また同時にこれらの変異に対応してFAPの臨床像も多様性を示す。近年,変異TTR遺伝子の発現部位である肝臓を移植により正常肝にすることで根治を目指そうとして肝移植が導入され,良好な成果をあげている。
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