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文献詳細

雑誌文献

生体の科学50巻5号

1999年10月発行

文献概要

特集 病気の分子細胞生物学 1.筋・神経・精神疾患

先天性無痛無汗症

著者: 犬童康弘1

所属機関: 1熊本大学医学部小児科

ページ範囲:P.379 - P.380

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 [疾患概略]
 先天性無痛無汗症(CIPA)は温覚と痛覚さらに発汗機能を欠如し,精神遅滞などの中枢神経障害を伴う常染色体劣性遺伝の疾患である。欧米では1963年のSwansonらの報告1)が最初とされるが,わが国ではこれより先に,西田らにより「全身無汗症」として報告されている2)
 痛みはヒトにとって大きな苦痛であり,その原因を明らかにし,これを取り除くことは,医療の重要な仕事のひとつである。しかし,痛みは本来,健康な生活を送るために必要不可欠な生理現象で,危害から体を守る警告信号となる。また,発汗は高温環境に置かれたヒトの体温調節に重要な働きをする。このため,発汗機能が障害されると熱放散が妨げられて発熱し,正常な生体機能を維持できなくなる。CIPAの患者では,環境温度に依存した発熱,自傷行為,精神遅滞などが見られる。骨折や脱臼を起こしやすく,痛覚がないため安静が保てず治癒が遷延し,しかもこれらを繰り返すために,関節や四肢の変形などの後遺症・機能障害を残しやすい。皮膚生検では,汗腺組織は存在し,その数や形態に異常は認められないが,汗腺を支配する交感神経節後線維が欠損している。末梢神経生検では,温・痛覚を伝達する無髄神経・小径有髄神経が特異的に欠損している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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