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文献詳細

雑誌文献

生体の科学50巻5号

1999年10月発行

文献概要

特集 病気の分子細胞生物学 8.代謝・栄養障害

高グリシン血症

著者: 呉繁夫1

所属機関: 1東北大学大学院医学系研究科小児医学講座遺伝病学分野

ページ範囲:P.447 - P.448

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 [疾患概略]
 高グリシン血症は種々の有機酸代謝異常症の際にも認められるが,グリシンの一次的代謝障害も存在し,非ケトーシス型高グリシン血症(nonketotic hyperglycinemia;NKH)と呼ばれる1)。NKHの最大の特徴は体液中のグリシンの蓄積であり,髄液中グリシン濃度は正常の100倍にも及ぶ。中枢神経系に高濃度で存在するグリシンは様々な神経障害を引き起こすと考えられ,患児は生後数日以内に痙攣,筋緊張低下,意識障害,無呼吸発作などの重篤な症状を呈し,脳炎とよく似た症状を呈するためグリシン脳症(glycine encephalopathy)と呼ばれることもある。予後は極めて不良で数週間以内に死亡するか,生存し得ても重度の障害を残す。多くの患児は以上のような典型的な経過を示す新生児型であるが,本症には新生児期には無症状で経過し,その後次第に精神運動発達の遅れが目立ってくる遅発型も存在する。この中には成人例で痙攣や意識障害などがなく,精神発育遅延や行動異常のみを有する症例も含まれており,表現型の異質性は強い。過去10年間に診断された患児数に基づくと,わが国におけるNKHの発症頻度は約70万出生に1例と推定される。世界的に見ると,米国では25万出生に1名,カナダでは7万出生に1名程度であるが,フィンランド北部では6千出生に1名と際立ってその頻度が高い2)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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