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特集 病気の分子細胞生物学 8.代謝・栄養障害
先天性高蓚酸血症
著者: 市山新1
所属機関: 1浜松医科大学生化学第一講座
ページ範囲:P.451 - P.452
文献購入ページに移動先天性高蓚酸血症として,肝臓ペルオキシソームのserine:pyruvate/alanine:glyoxylate aminotransferase(SPT/AGT)の異常により起こる原発性高蓚酸尿症1型(primary hyperoxaluria type 1;PH1)と,サイトソルのD-glycerate dehydrogenase/glyoxylate reductase(DGDH/GR)の欠損が原因の同2型(PH2)が知られている。いずれも蓚酸過剰生産を主徴とする常染色体劣性遺伝疾患である。PH1では蓚酸と共に多量のグリコール酸が尿に排泄されることが多く,PH2では蓚酸とL-グリセリン酸が排泄される1)。PH2の場合,通常はDGDH/GRの基質になり,D-グリセリン酸を経て代謝されるヒドロキシピルビン酸(SPT/AGTの作用によりセリンから生じる代謝中間体)が,DGDH/GRの欠損のため乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の作用を受けてL-グリセリン酸に還元される。PHはまれな疾患であるが,なかでもPH2の頻度はPH1よりはるかに低く,知見の蓄積が少ないので,以下にPH1について述べる。
蓚酸はそのカルシウム塩が中性条件で水に難溶のため結石の原因になる。PH1の場合,蓚酸の過剰生産のため典型的には幼少時より尿路結石を反復し,腎石灰化症をともない腎不全となる。
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