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文献詳細

雑誌文献

生体の科学50巻6号

1999年12月発行

特集 細胞内輸送

核-細胞質間タンパク質輸送の分子機構

著者: 米田悦啓1

所属機関: 1大阪大学大学院医学系研究科情報伝達医学専攻機能形態学講座

ページ範囲:P.531 - P.538

文献概要

 遺伝子の複製や転写の場である細胞核(以下,核と呼ぶ)は,核膜という2層の脂質二重膜によって,蛋白質合成の場である細胞質と厳密に隔てられている。従って,核と細胞質の間では,核膜に存在する核膜孔を介して常に物質が輸送され,情報の交換が行われている。核膜孔は直径約100nmもある物理的小孔で,その内周には50~100種類もの蛋白質からなる複雑な構造体である核膜孔複合体が存在する1,2)。この核膜孔複合体の間を物質が通過するわけであるが,分子質量が40~60kDa以下の物質は自由に通過することが可能で,濃度勾配に従って受動的に拡散することができる。一方,分子質量に関わらず物質を濃度勾配に逆らって細胞質から核へ,あるいは核から細胞質へ輸送する機構が細胞には存在する。
 DNAを鋳型にして核内で転写されたRNAは核膜孔を通って細胞質に輸送され,細胞質ではその中のmRNAの情報に基づいてリボソーム上で蛋白質に翻訳される。翻訳された蛋白質のうち核内で機能する蛋白質(核蛋白質)は,核膜孔を通ってmRNAとは逆向きに核内へ輸送される。さらには,核内で機能して不要になった蛋白質や,核内に存在していては困る蛋白質などが逆に核から細胞質に輸送されるメカニズムも存在する。近年,核と細胞質の間の情報交換の重要性が認識され,その基盤となる核―細胞質間蛋白質輸送機構が分子レベルで解明されてきた3,4)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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