特集 細胞内輸送
マクロファージのエンドサイトーシスにおけるマクロファージスカベンジャー受容体の細胞内輸送経路
著者:
高橋潔1
森孝志2
吉松美佳1
坂下直実1
所属機関:
1熊本大学医学部病理学第二講座
2国立療養所宮崎病院
ページ範囲:P.581 - P.587
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エンドサイトーシスは細胞が種々の物質を取り込む基本的な機能で,生体が生存する上に不可欠である。この取り込み過程は細胞食作用(cell eating:貪食phagocytosis)と細胞飲作用(cell drinking:貪飲pinocytosis)とに区別される。このうち,パイノサイトーシスはほとんどすべての細胞種に備わっている機能である。これに対して,貪食はある特定の細胞にのみ付与された機能で,その機能を専業的に行っている細胞がマクロファージである1)。貪食とは細胞が直径1μm以上の大きな物質を取り込む現象で,マクロファージに兼ね備わった旺盛なパイノサイトーシスの極限の機能として発揮される。マクロファージの細胞表面には,170種類を上回るきわめて多種類の受容体あるいは表面抗原が存在し,種々の物質との結合あるいは接着,細胞内へのシグナル伝達,エンドサイトーシスへの関与など多様な機能を営んでいる。
エンドサイトーシスに関してマクロファージの重要な受容体にはFc受容体やC3受容体があり,両者は免疫現象に関連することから免疫受容体(immune receptors)と呼ばれる1)。マクロファージがこれらの受容体を介してオプソニン化された物質を取り込む現象を免疫貧食(immune phagocytosis)という1)。