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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻1号

2000年02月発行

文献概要

特集 脳を守る21世紀生命科学の展望

脳卒中の克服―神経細胞保護因子の実用可能性

著者: 阪中雅広1 田中潤也2 前田信治3 佐藤康二4

所属機関: 1愛媛大学医学部解剖学第二講座 2愛媛大学医学部生理学第一講座 3愛媛大学医学部生理学第二講座 4浜松医科大学解剖学第一講座

ページ範囲:P.11 - P.17

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 わが国の脳卒中医療費は年間約3兆円であり,疾患別では癌の医療費を抜いて堂々の第一位である。また,入院加療を必要とする脳卒中患者の数は入院中の癌患者の数より多いのである。西暦2000年4月から介護保険制度が導入される予定であるが,介護の対象となる高齢者の多くが脳卒中患者であることを考慮に入れると,超高齢化社会を迎えつつあるわが国において,脳卒中の治療・予防・処置法の確立はまさに国家的使命であるといっても過言ではない。
 脳卒中の病型の中でも脳梗塞(脳血栓,脳塞栓)の症例が非常に多いことに鑑みて,最近は虚血性神経細胞死の分子機構もしくはメカニズムに的を絞った研究が精力的に実施されている。実は,脳卒中研究に限らず神経変性疾患研究においても,その原因ならびに責任遺伝子の解析が膨大な新知見をもたらしている。すなわち,神経疾患の原因・責任遺伝子あるいは神経細胞死の分子機構が解明されれば,将来治療法の開発につながるという前提のもとに,われわれは過去20年間分子生物学的手法を駆使してメカニズム解析志向型研究を実施してきたのである。しかし,「病気のメカニズム解明から治療へ」という一方向の研究を重ねてゆくだけで,難治性神経疾患に苦しむ数千万もの患者を来世紀に救うことはできるだろうか,という単純な疑問をわれわれは数年前より抱き始めていた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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