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特集 脳を守る21世紀生命科学の展望
神経変性疾患の克服―CAGリピート病
著者: 貫名信行1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センターCAGリピート病研究チーム
ページ範囲:P.25 - P.31
文献購入ページに移動 一般に疾患の克服とは疾患の発症の予防,進行の阻止,症状の軽減といったこととなろう。遺伝性が明確でない疾患に関しては,発症の機序が不明で危険因子もわかっていない場合,発症予防は困難であり,結果的には症状の軽減をめざすことになる。パーキンソン病などはその例で,比較的変性する系が限局しているためにL-dopaによる症状の軽減が可能である。しかしながら進行は防げないので,神経変性の機序の解明によって危険因子の同定を行い,発症を防ぐ,あるいは発症後の進行を止める方法を見出すことが必要となる。
遺伝性の明確な疾患に関しては様相が若干異なる。遺伝性神経変性疾患の発症者の遺伝子異常が同定された場合,もし発症予防法が確立されていれば,同胞の未発症者の発症予防が可能になる。この場合,未発症者の遺伝子診断は現在発症予防法のない疾患が多いため倫理的に問題とされているが,これもむしろ有用なものとして推奨されるようになるであろう。この数年の遺伝性神経変性疾患のポジショナルクローニングによる同定のめざましさは,必ずしも発症予防法の確立に直接つながらないため,臨床的にはむしろとまどいを引き起こしているといえる。
遺伝性の明確な疾患に関しては様相が若干異なる。遺伝性神経変性疾患の発症者の遺伝子異常が同定された場合,もし発症予防法が確立されていれば,同胞の未発症者の発症予防が可能になる。この場合,未発症者の遺伝子診断は現在発症予防法のない疾患が多いため倫理的に問題とされているが,これもむしろ有用なものとして推奨されるようになるであろう。この数年の遺伝性神経変性疾患のポジショナルクローニングによる同定のめざましさは,必ずしも発症予防法の確立に直接つながらないため,臨床的にはむしろとまどいを引き起こしているといえる。
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