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特集 脳を守る21世紀生命科学の展望
精神疾患の克服
著者: 西川徹12
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学 2国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第三部
ページ範囲:P.68 - P.73
文献購入ページに移動不思議なことに,精神疾患は神経変性疾患と異なって,脳の障害でありながら現在の技術レベルでは脳にその形態的痕跡を探すことが難しい。これは精神疾患の生物学的確定診断を妨げ解明を後らせている最大要因のひとつであると同時に,精神疾患と神経変性疾患とでは,脳の障害の原理が全く異なることを示唆している。精神疾患の治療薬や精神異常発現薬が,様々な神経のシナプス伝達に直接影響することが知られるようになり,精神疾患では一般に,シナプスを中心とした神経情報処理過程を実行および調節する分子カスケードに異常が生じていると考えられている。神経変性疾患の原理である細胞死や細胞変性に対して「細胞変調」と呼べるかもしれない。
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