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初耳事典
意識に関連した神経細胞活動/他7件
著者: 田中啓治1
所属機関: 1理化学研究所脳科学総合研究センター
ページ範囲:P.80 - P.84
文献購入ページに移動 Crick and Koch1)は,知覚および認知が意識的になるのは目の前の状況に対して統一した理解を作り行動をひとつにするためであると考えた。行動における競合を避けるためには感覚入力の統一的理解が必要であり,これこそが知覚における意識の機能上の起源であるとCrick and Kochは考えた。意識が行動の統一のためにあるのなら,意識的知覚に対応する細胞活動は行動の指令を発する前頭葉,特に前頭前野に向かって直接出力を送る脳部位に限局されると推定される。物体視経路についていえば,最終ステージである下側頭葉皮質からは前頭前野への強い結合があるが,経路の始まりである第一次視覚野から前頭葉への結合はない。Crick and Kochの予想に一致するいくつかの実験結果が最近2,3年の間に報告されている。
ランダムドットステレオグラムでは,左右の目で点のコントラストを逆にする(左目で白点が右目で黒点,左目で黒点が右目で白点)と立体視が成立しないことが知られている。Cumming and Parker2)は,この刺激に対して第一次視覚野の細胞が左右眼視差依存性の反応を示すことを見出した。この実験結果は,第一次視覚野の細胞活動が意識的知覚に十分でないことを示している。
ランダムドットステレオグラムでは,左右の目で点のコントラストを逆にする(左目で白点が右目で黒点,左目で黒点が右目で白点)と立体視が成立しないことが知られている。Cumming and Parker2)は,この刺激に対して第一次視覚野の細胞が左右眼視差依存性の反応を示すことを見出した。この実験結果は,第一次視覚野の細胞活動が意識的知覚に十分でないことを示している。
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