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特集 細胞極性の形成機序
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哺乳動物初期胚の発生機構,とくに割球の分化能と発生能についてはマウスを中心に研究され,かなり明確にされつつあるが,その他の動物では情報が極めて少ない。マウスで得られた成果を基に,哺乳動物の発生機構としていくつかの考え方が提唱されており,代表的なものとして,inside-outside仮説1)やこれを拡張した極性形成(polarization)仮説2)がある。前者は桑実胚における割球の位置が重要であるとする説で,実験的に割球の位置を胚の外側や内側に置換して,再集合させた胚の分化能を検討した研究に基づいている。すなわち,内側に位置した割球は内細胞塊に分化し,外側に位置した割球は栄養膜細胞に分化して胚盤胞を形成するというものである。一方,極性形成仮説は胚の緊密化が起こった後の割球間の相互作用から生じる細胞質内における特定の機能単位の再構成または勾配形成により分化能が決定するとの考え方である。本稿では,ハムスター胚を中心に初期胚における極性形成に関する情報について紹介し,マウス胚で報告されている現象との相違点を概説する。
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