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特集 細胞極性の形成機序
上皮細胞における膜タンパク質の選別輸送
著者: 大野博司1
所属機関: 1金沢大学がん研究所分子薬理学研究分野
ページ範囲:P.147 - P.152
文献購入ページに移動 本特集のこれまでの項でも述べられてきたように,上皮細胞は極性を持っており,それが上皮細胞としての機能にも決定的に重要である。すなわち,上皮細胞の細胞膜はtight junctionという障壁によって外界(例えば腸管上皮では腸の内腔)に接する先端面(apical surface)と,体内に面した側基底面(basolateral surface)とに物理的に仕切られ,それぞれの細胞膜は異なる脂質およびタンパク質組成を持つことにより異なる機能を担っているのである。したがって,この細胞の極性を保つために,新たに合成されて細胞膜に向かう膜タンパク質はそれぞれ,その局在すべき先端面あるいは側基底面細胞膜へと選択的に輸送されなければならない。これを選別輸送と呼ぶ(図1)。
細胞が極性を保つためには新たに合成されたタンパク質ばかりでなく,すでに存在するタンパク質の極性も保たれなければならない。例えばLDL受容体(LDLR)やトランスフェリン受容体(TfnR)は,上皮細胞では側基底面細胞膜とエンドソームとの間を往復することによりLDLや鉄を細胞内に取り込む,いわゆるリサイクリング受容体である。
細胞が極性を保つためには新たに合成されたタンパク質ばかりでなく,すでに存在するタンパク質の極性も保たれなければならない。例えばLDL受容体(LDLR)やトランスフェリン受容体(TfnR)は,上皮細胞では側基底面細胞膜とエンドソームとの間を往復することによりLDLや鉄を細胞内に取り込む,いわゆるリサイクリング受容体である。
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