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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻2号

2000年04月発行

文献概要

解説

視覚系の神経回路

著者: 外山敬介12

所属機関: 1京都府立医科大学 2島津基盤技術研究所

ページ範囲:P.153 - P.163

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 Ⅰ.視覚系大脳皮質の神経回路
 1.層状構造
 6層の層状構造はすべての大脳新皮質に共通の神経回路の構造であるが,視覚系大脳皮質,特に視覚野でよく発達している。層状構造は単に細胞が層状に配列されているだけでなく,神経細胞の結合する相手を規定する構造であり,その形成過程は遺伝子により制御されている1,2)。層特異的神経結合は視覚野で最もよく研究されている。視覚信号を中継する外側膝状体の求心線維は4層の視覚野細胞とシナプス結合を形成し,2・3層の細胞がほかの皮質領野,5層の細胞は上丘などの皮質下の神経核,6層の細胞は外側膝状体などの皮質下核へ投射することが示されている(図1A,B)3)
 その後の研究により3層と5,6層がそれぞれ上位と下位の皮質へ信号を送り,4層が下位の大脳皮質から信号を受け,その他の層が上位の皮質から信号を受けることが示され,層特異的結合は大脳皮質の階層構造を指定する普遍的な機構であることが明らかとなった4)。層特異的結合は4層から2・3層,3層から5層,5層から6層,6層からさらに4層に戻る皮質内の柱状興奮経路を指定する機構でもあることが示されている5)。高次視覚野についても,視覚野に比して,4層が薄く,2・3層が厚いという違いはあるが,神経回路の基本構造は視覚野と同一である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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