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文献詳細

雑誌文献

生体の科学51巻3号

2000年06月発行

文献概要

特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構

カブトガニの異物認識の分子機構

著者: 川畑俊一郎1

所属機関: 1九州大学大学院理学研究科生物学専攻

ページ範囲:P.187 - P.193

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 無脊椎動物の生体防御反応においては,抗体産生系の欠除のために,非自己認識レクチンや抗菌性物質1-3),フェノールオキシダーゼ系4)などの自然免疫が主役である。古生代に繁栄をきわめた三葉虫を先祖とするカブトガニは,現在は,北アメリカ東岸と中米ユカタン半島沿岸,アジア大陸の東南海域沿岸に計4種が分布し,九州北部沿岸にはTachypleus tridentatusが棲息している。分類学的には,節足動物門,節口綱,剣尾目に属し,エビ,カニなどの甲殻綱よりもクモ形綱に近縁である。T. tridentatusの体液中に存在する血球のほとんどは一種類の顆粒細胞で占められ,その顆粒細胞内には,密度が異なり超遠心機で分離可能な大,小二つの顆粒があって,体液凝固因子,プロテアーゼインヒビター,レクチン,抗菌物質など生体防御関連因子が選択的に貯蔵されている2)
 この顆粒細胞はグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖(Lipopolysaccharides;LPS)に鋭敏に反応して,顆粒成分を細胞外へ分泌する。その結果,瞬時に体液凝固のセリンプロテアーゼカスケードが起動して体液の流出が阻止される2)。同時に,侵入した微生物はレクチンにより凝集されて異物認識と排除を誘発し,抗菌物質で殺菌されるとともに,最終的には創傷治癒といった一連の生体防御反応を引き起こすと考えられる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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